描き込まれた背景、ディティールの細やかさ、繊細な色味。
イラストレーター中村佑介が語る、魅力と商品の誕生秘話を公開!
カラフルで大胆な配色、様々な思想や物語が詰まった世界に、凛と佇む女の子。
手掛けるのは、鮮烈な色彩とノスタルジックな作風で人気を誇る、イラストレーター・中村佑介さん。
今回は、中村さんの20年にわたる作家活動の中で生み出された作品群から、11点を厳選。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのCDジャケットや、
森見登美彦原作の『夜は短し歩けよ乙女』、『四畳半神話大系』の装丁画など、
中村佑介ワールドを堪能できるコレクションアイテムが誕生。
コレクション誕生までの道のりや作品に向ける想いを、
グラニフでコラボレーションを担当する石川との対談形式で語っていただきました。
4年越しのオファーにより、
コラボレーションが実現
─ イラストTシャツって
ダサいと思ってた ─
── 今回のコラボレーションに至るまでの経緯を教えてください。
石川 グラニフの社内にも中村さんが描くイラストのファンが多く、4年ほど前からずっとアプローチを続けていました。今回のコラボレーションは「遂に念願が叶った」という気持ちです。
中村さん(以下、敬称略) 初めてオファーをいただいた当時は、昔のアニメTシャツみたいなものを作るのだろうとイメージしていました。それはファンが作品への愛を表現するためのアイテムで、部屋やイベントなどでは着るけど、普段は主張が強すぎて着られない……みたいな。しかし、グラニフさんから映画『サマーウォーズ』の描き下ろしTシャツを作る仕事をいただいた時に、考えが180度変わりました。もともとは僕自身が作品の大ファンだったのでお受けしたのですが、発売までのやりとりの中で、グラニフさんのグラフィックやディテールにこだわった丁寧な作り込みに驚かされると同時に、その時はじめてイラストTシャツも十分にファッションとして成立すると実感したんです。
石川 『サマーウォーズ』を手掛けたアニメ制作会社『スタジオ地図』さんの、設立十周年を記念したコラボ企画でしたね。2021年の発当時、コラボレーションは話題を呼び、発売した商品はほぼ完売しました。
中村 作品の再現性にこだわって、リテイクにも丁寧に対応して下さって。正直、リーズナブルなアイテムが主力商品のアパレル会社さんは、制作期間が短いと思っていましたが、半年以上かけましたよね? あの仕事でグラニフさんが作品、モチーフを大切にする企業であることを知り、今回のコラボレーションも是非ご一緒したいと思ったんです。
石川 その半年の間でお話できる機会がたくさんあったので、「これで終わりにしたくない!」と企画が終わる前に中村さんに今回のコラボレーションを打診しました。
中村 たとえば面白そうな商品化のお話をいただいても、打ち合わせの際に窓口となる方が「担当者に確認します」ってなると、裁量権ないんだなと思ってお断りするんです。石川さんは何を聞いても「できます!」とか「それは無理です」とはっきり言ってくれるので、判断を任せられていることが伝わってきて安心できたんですよね。商品化への熱意を感じました。
石川 ありがとうございます。でも実は、中村さんとの打ち合わせが終わった後、生産チームに「ごめん、できるって言っちゃった!」って謝ってるんですよ(笑)
アイデアと工夫で
魅力的なアイテムを創る
─「こだわっているから高価」、
とは言いたくない ─
── 今回のコラボレーションで特にこだわった点はどこでしょうか?
中村 僕は“仕事は流しはじめたら終わり”だと思っていて、今回も“これでいいや”と手を抜いた作品は一つもなく、すべてにこだわらせて頂きました。その中であえて例を挙げるなら、12cm×12cmというCDジャケットの魅力を洋服で表現できたのは嬉しかったですね。
石川 ASIAN KUNG-FU GENERATIONさんのCDジャケットのTシャツですね。グラニフが提案したのは4枚の表紙を並べたデザインでしたが、中村さんから「一つを透明なポケットにしたい」とご提案いただきました。
中村 ポケットの下にCDの盤面イラストをプリントすることで、他のモチーフたちがCDジャケットであることが伝わるギミックです。CDの需要は年々減少していますが、僕の青春時代はCDが“イコール音楽”。今でも一番思い入れのあるメディアがCDです。
石川 好きなCDジャケットを入れて、着ても、飾ってもいい。何も入れなくても成立しているのが良いですよね。自分なりのアレンジを楽しんでいただけるアイテムになったのではないかと思います。
中村 グラニフさんのコレクションは、身につけるものならではの仕掛けが面白いんですよね。自分の作品を落とし込み、アイデアを膨らませるという挑戦は本当に楽しかったです。『夜は短し歩けよ乙女』のワンピースは、女の子の指から伸びる糸を赤い刺繍で表現し、袖の後ろまで繋げました。こうしたギミックは、実際に袖を通して着用するシーンを想像するからこそ生まれる、アパレルならではの醍醐味ですね。
石川 李白翁の三階建電車も袖を走ってるんですよね。洋服としてはもちろん、原作ファンの方々には「こうなったか!」と楽しんでいただけると嬉しいです。それと、ここの赤い糸の刺繍!原画はリンゴの外側から赤い糸になっていたのですが、商品では乙女の指先から赤い糸の刺繍になっています。これは中村さんとサンプルを見ながらお話ししている時に「やっぱり指先から刺繍にしたいよね」となり、中村さんがその日の内にデータを修正してくださったため実現しました。この一緒に作っているライブ感が楽しいですよね。
中村 このTシャツの胸元を飾っているポケットは、絵柄の通りに花札を思わせるサイズ感や、ペタッと張り付いて見えるような角度にこだわりました。面白いんじゃないかなって。
石川 はじめは通常のポケットにカバーイラストをプリントするデザインを提案していたのですが、「花札がそこに自然に置かれているかのように見せたい」という中村さんの閃きを採用させていただきました。
── 描き込まれた背景や、ディテールの細かさ、鮮烈な色味が特徴の中村作品ですが、プリントの仕上がりはいかがでしたか?
中村 原作のファンや、僕のイラストを好んでくれている方を裏切るわけにはいかないので、プリントのクオリティにはかなりこだわらせていただきました。時には難しい要求をしたかもしれませんが、石川さんはいつも「頑張りました!」と言って、期待通りの修正版を持ってきてくれました。「“頑張った”って何を!? 頑張ったってこんな綺麗な色は出ないんじゃないの?(笑)」っていつも驚かされましたよ。
石川 工程が複雑すぎることと、それでも生産チームや工場さんの努力を伝えたい気持ちで「頑張った」という表現になってしまいました(笑)。ちなみに今回持ってきたプリントサンプルも、技術スタッフたちが“頑張り”ました! この女の子のスカート裏地ですが、中村さんが描くレース生地の風合いを表現すべく、ベースに白を敷き、さらに色を重ねてなんとかニュアンスを表現することができました。僕や技術スタッフたちは、まず中村さんに驚いて欲しいという思いもあるんです。
中村 色の再現度もすごかったです。このホワイトタイガーの少しグレーがかった白もすごくリッチ。これは素敵ですよ。僕が女の子だったら着たい!
石川 『四畳半神話大系』のシルクスクリーンプリントのTシャツも修正を重ねましたね。ファーストサンプルでは女の子の洋服の色が薄かったのでシアン(青み)を足しましたが、月やモチグマンの黄色が影響を受けてしまい、さらに微調整を重ねました。
中村 セカンドサンプルでもOKを出したと思いますが、さらに3回目が来るとは……。すごいな技術スタッフさん! 手にしていただきやすい価格のまま、アイデアや技術力で魅力的なものを作るのが本当のいい仕事ですよね。だって「こだわっているから高い」って当たり前ですし、僕がお客さんなら「そんな内情は知らないよ」と思う。価格を抑えているのに、このクオリティが素晴らしい。グラニフさんじゃないとできないことですよね。
─ 媚びない、笑わない
ニュートラルな女の子の姿に
込めた想い ─
── 中村作品の代名詞でもある凛としてかっこいい女の子たち。今回のコレクションアイテムにもたくさん登場している、女の子の姿に込めた想いを教えてください。
中村 僕が描く女の子は笑っていないんです。かと言って不機嫌なわけではなく、自然体なんです。女性って社会から「笑え」という圧力を受け続けている。男性だったらムスっとしていても許されるのに、女性だと愛嬌がないとか言われますよね。僕は人が無理をして笑っている状態が好きではないし、そういう人を魅力的だと思えない。だから、描く女の子は、いつもニュートラル。その姿を見て共感というか、着る方も見る方も「いいんだよね」って安心してもらえたら嬉しいですね。
石川 CDジャケットや小説のカバーを抜け出したことで、女の子たちの存在感や魅力を改めて感じます。中村さんのイラスト、ASIAN KUNG-FU GENERATIONさん、小説やアニメのファンの方々はもちろんですが、それ以外の方にも魅力的なコレクションに仕上げられたのではと思っています。
中村 それは嬉しいです。それにしても、楽しかった!またぜひやりたいですね。
Profile
中村佑介(なかむら ゆうすけ)
1978年生まれ。兵庫県宝塚市出身。大阪芸術大学デザイン学科卒業。ASIAN KUNG-FU GENERATION、さだまさしのCDジャケットをはじめ、『謎解きはディナーのあとで』、『夜は短し歩けよ乙女』、音楽の教科書など数多くの書籍カバーを手掛けるイラストレーター。ほかにもアニメ『四畳半神話大系』や『果汁グミ』TVCMのキャラクターデザイン、セイルズとしてのバンド活動、テレビやラジオ出演、エッセイ執筆など表現は多岐にわたる。初作品集『Blue』は、画集では異例の9.5万部を記録中。
プロダクトディビジョン ライセンスセクション マネージャー
石川 祐
グラニフのコラボレーション責任者。コラボ商品の企画立案から商品リリースまでを総合プロデュース。作家や作品に寄り添い、一人のファンとして、商品開発に取り組んでいる。趣味はエンタメ全般。他人の趣味の話を聞くこと。
中村佑介ワールド全開の
11種のコレクションアイテム
イラストのクオリティはそのままに、
中村佑介さんご本人のアイデアが
たくさん散りばめられたコレクションアイテムは、
まさに身につけて楽しめるアート。
気になる全ラインナップをご紹介。
12cm×12cmのアート
CDの魅力を再認識
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのシングル『君という花』『リライト』『ワールドアパート』『ソラニン』『今を生きて』『荒野を歩け』のジャケットイラストが、実寸大でプリントされたTシャツ。表のシースルーポケットには、お好きなCDジャケットを入れることができる遊び心を。
時代を駆け抜け、進化する姿を一枚に
ASIAN KUNG-FU GENERATIONの2ndアルバム『ソルファ』のジャケットイラストをあしらったTシャツ。バックには、同じ曲を全て再レコーディングした『ソルファ2016ver.』のイラストが。時代を超えて進化する姿が、表と裏で楽しめます。裾にプリントされた新旧のロゴもポイント。
アルバムの世界観を表現した
“華のある”モノクロデザイン
ASIAN KUNG-FU GENERATION 3rdアルバム『ファンクラブ』のジャケットイラストを採用。アルバムの世界観が、白と黒のモチーフのみで表現された作品。モノクロながら華やかさもあり、スタイリングに取り入れやすいデザインです。
四畳半に広がる無限の世界を
Tシャツに
森見登美彦原作のアニメ『四畳半神話大系』DVD2巻のジャケットから。バラ色のキャンパスライフを求め、大学サークルをパラレル移動する主人公“私”。四畳半の部屋から無限に広がるその世界がTシャツに!
女子高校生組長の
可愛さは永遠に不滅
時代を超えて愛される赤川次郎の小説『セーラー服と機関銃』。懐かしさの中に新しさが宿る装丁画を、花札を模したポケットと、バックに大きくステッチ刺繍で表現したTシャツ。
ロックフェスティバルを
盛り上げた
幻獣たちの饗宴
ASIAN KUNG-FU GENERATIONが主催したロックフェスティバル『ナノムゲンフェス』。歴代のシンボルマークとなった個性豊かな幻獣たちが、開襟シャツを華やかに彩ります。
宇宙にまで広がるスケール感を
背中で表現する、粋な開襟シャツ
『四畳半神話大系』ブルーレイボックスのカバーイラストを大胆にプリントしたバックスタイル。主人公“私”の本能を象徴するキャラクター ジョニーが、フロントのポケットから飛び立とうとしている姿も見逃せないポイント。
ストーリーを感じさせる
凛とした女の子のイラストが背中に
中村佑介さんが描く女の子の姿がバックを飾る2枚のワンピース。
左:森見登美彦作『夜は短し恋せよ乙女』のカバーイラスト。夜を見上げる黒髪の乙女の小指に結ばれた赤い糸を刺繍で表現。
右:ASIAN KUNG-FU GENERATIONのシングル『Re:Re:』のジャケットイラスト。過去を見つめ懐かしむ姿と、進化する音楽性が相対的に描かれたデザイン。ゆったりとしたマキシTシャツワンピース。絶妙な深さで入った裾スリットは、動きやすくてストレスフリー。
楽曲とリンクした
印象的なデザインを
トートバッグに
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのシングル『リライト』のジャケットイラストを全面に配したトートバッグ。現代社会や音楽業界のもどかしさに抗う白い虎と、アンニュイな少女二人の表情に心掴まれるアートワーク。収納豊富な大きめサイズも手放せなくなるポイント。
お揃いで持ちたくなる
“繋がる”トートバッグ
ASIAN KUNG-FU GENERATIONの1stミニアルバム『崩壊アンプリファー』と1stアルバム『君繋ファイブエム』。左右が繋がるように描かれた二つのジャケットイラストを両面にあしらい、赤い糸で繋いだトートバッグ。誰かとお揃いで持ちたくなるアイテムです。
中村佑介
コラボレーション発売記念
フォロー&RTキャンペーン
中村佑介コラボレーションの発売を記念して、
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[応募期間]
2022年6月21日(火) 〜7月5日(火)
[賞品]
中村佑介 直筆サイン&お名前入りトートバッグ
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撮影/村本祥一<BYTHEWAY> 編集/諸橋 宏 文/竹場晶子