2024.10.25
不定期連載「コラボの原産地」第16回です。
コラボレーション商品を紹介することを口実に、
作家さんやアーティストさんと制作秘話を対談する企画です。
今回のインタビューは『GS美神 極楽大作戦!!』『絶対可憐チルドレン』などで
大人気の漫画家、椎名高志さんです。
今回もインタビュアーを務めるのは、グラニフコラボレーション担当の石川です。
幼少期から何度も読み返している作品の生みの親である椎名先生とお話できる、
この機会を逃さずお伺いしたかったことを全て聞いてきました!
今だから聞ける貴重な漫画の裏話やキャラクター秘話も満載です! ぜひ最後までご覧ください。
漫画とアパレルの融合、椎名先生の第一印象は?
石川それではインタビューを始めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
椎名先生(以下、敬称略) よろしくお願いします。
石川僕は連載当時からずっと先生の漫画を読ませていただいていて、『GS(ゴーストスイーパー)美神 極楽大作戦!!』(以下『GS美神』)は何周したかわからないぐらい愛読しています。お会いできるのが光栄すぎて、まさか自分にこんな機会が訪れるなんて中学生のときの自分に自慢したいぐらいです。今日は仕事ですがファン目線が強くなりすぎてしまったら申しわけございません。
椎名はは、ありがとうございます。
石川今回は『GS美神』と『絶対可憐チルドレン』(以下『絶チル』)をグラニフで商品化させていただきありがとうございます。 本日は全部ではないのですが商品の形になってきているものをお持ちしました。これを見ていただきながらお話をお伺いしたいと思います。
椎名はい。よろしくお願いします。
石川まずグラニフとのコラボレーションについてお伺いしたいのですが、そもそもグラニフというブランドはご存じでしたでしょうか? ご存じでしたら、先生から見たグラニフのイメージもお聞かせください。
椎名吉祥寺にあるお店を見たことがあります。僕はあまりファッションに馴染みがないほうですが、割と入りやすくて安心感のあるお店だなというイメージです。
石川ありがとうございます。グラニフはこれまでも週刊少年サンデーの作家さんと何度かコラボレーションさせていただいているのですが、ご覧いただいたことはありますか?
椎名何点かチラッと見て、いいなと思ったことはありますね。
石川そのとき担当の方と「大好きなのでいつか椎名先生のコラボもやりたいです」というお話をしていまして、今回やっと実現しました。グラニフからコラボのお話が来てます、と聞かれたときは最初どう思われましたか?
椎名いやぁ、「僕の作風でアパレルにしていいの?」と思いましたね。もうちょっとアーティスティックな作風の人がやるんじゃないのかな? と思っていたので、「企画した人大丈夫かな、あとで怒られないかな? 」って感じでした。
石川「もう本当にすばらしい作品だから!」 と社内でもプレゼンした上で、きちんと社内で許可をもらっています。実際にこうして形にさせてもらって、やっぱり商品化させてもらって良かったと確信しています。
椎名ありがとうございます。
石川我々からデザインを提出させていただく前に「こんなものが上がってきたらいいな」など期待は何かありましたか?
椎名もともとデザイン的に商品展開するのをイメージして作ったキャラや世界観ではないので、普通にやるとアニメグッズになるだろうなと。それをアパレルブランドのグラニフさんのブランドイメージを保ちながらデザインするのは大変じゃないの? と思っていました。そこはちょっと逆に楽しみにしていましたね。
石川どうでしょうか、期待には応えられていましたか?
椎名僕はうれしいですけど、本当にグラニフさんは大丈夫?(笑)お客さんやブランドイメージが心配、とは思いました。
石川待ってる方がたくさんいらっしゃると思っています。僕自身ももちろんそうですが、やっぱりリクエストのお声も多く聞きますので。
椎名これはオフレコにした方がいいと思うんですが(苦笑)、正直なところ、これってみなさん外で着れるものですか? 大丈夫ですか?
石川もちろん着れます! 手持ちのアイテムとのバランスを持ちつつファッションを楽しんでいただけたらと思います。
いろいろな作家さんとお話していても、やはりご自身の絵のものは商品として客観的に見られない部分があると聞きます。
椎名ああ、なるほど。
石川では早速、それぞれの商品をご説明させていただきながらお話させてください。
椎名はい。
コレクション紹介
■新作描き下ろし!
「シャドースイーパー美神」Tシャツの魅力
石川今回はなんと『GS美神』美神令子除霊事務所の3人の新作イラストを描き下ろしていただきました。Tシャツのバックにはお札と作品ロゴを入れさせていただいています。
描き下ろしまでしていただいて、本当にありがとうございます。グラニフから「こんな感じのイメージで」とかなりラフなイラスト案をお送りしてお願いする形でしたが、そのときからこの完成形はイメージできていらっしゃいましたか?
椎名オーダーが「元気に」だったのでそのように努めましたが、最終的にどう商品デザインが上がるのかはちょっとわからなかったですね。なのでこちらとしては「1枚のイラストとしておもしろくなるように」ということだけを考えました。もっとデザイン的にしなくていいのか、記号的にしなくていいのか? とは思いながら、普通に描きましたね。
石川最高でした!しかも弊社のオリジナルキャラ「ビューティフルシャドー」まで一緒に入れていただき、この共演はグラニフの担当者としてもうれしすぎました。ありがとうございます。
椎名そうですか、よかったです。
石川先生が今『GS美神』の3人を描かれるとこういう感じになるんだ、というのも当時から漫画を読んでいた人間としてうれしいです。
椎名古くからのファンには「絵柄が変わった」なんて言われることもありますよ。
石川先生の画業30周年のメモリアルブック『椎名高志の漫画術』の中のインタビューでも先生がそういったお話をされていましたが、僕は今の先生のタッチで見れるのがうれしいです。
ファンのみなさんからの感想は、SNSなどで見られているのですか?
椎名そうですね。以前は僕自身のXでたまに落描きを投稿して遊んだりしていたんですが、「絵が違う」といった感想も割といただいて。ただ、漫画家としては絵が変わるのは当たり前のことですし、90年代の芸風のままだったら今ここに僕はいないだろうから、そこは容赦してよ!というのもありますね(苦笑)。
石川「元気に」というこちらからのオーダーも含め、先生が描き下ろしでこだわった点はありましたか?
椎名今の絵でもなるべく似るようにと言いますか、絵柄が変わってしまっているので今の絵で描いても別人にはならないように、というのは気をつけますね。
石川美神さんや横島くんを描かれるのは久しぶりだったのでしょうか?
椎名そうですね、そんなにちょくちょくは描かないので。ただ、連載が終わっても完結して成仏したみたいな漫画ではないですし、付き合いが長い子達なので、僕の中では今でも現役で元気にやってるキャラ達です。なので機会があれば全然、楽しく描きますね。
石川当時がっつりハマっていた人間としては、いつかまた続きが読みたいな、という気持ちもありますし、心の中に「キャラのみんなは今どうしてるのかな?」という思いもあります。
描き下ろしイラストの3人はどの時点でのもの、というのはあるでしょうか? 最終回の後など先生の中で何かイメージはありましたか?
椎名話がどうなって終わるといった漫画ではないので、相変わらずの3人だと思います。
おそらく「その後」みたいな漫画を描くことになったら全く別の漫画になるだろうし、そうすると彼らである必要もないかな、という感じになるでしょう。作家としては後ろ(過去作品)にこだわることで自分が前を向いてない感じになるのは嫌なので、リメイクや続編という形ではあまり大きくは考えてないですね。ただ、短い作品ならいくらでもまだ描けるよと思ったりはしますね。
石川お願いします…! 真っ先に読みたいと本当に思います。僕は小学生のころ連載されていたときからずっと読んでいて、完結したあと何回も読み直しているんですが、今回商品化させていただくにあたってもう一回改めて一気に読み返しました。それで今の自分の感覚でもおもしろいと思うし、やっぱり続きが読みたいと感じています。
椎名外伝みたいなものは何作か描いていますね。確か一番最後に描いたのが東日本大震災のチャリティー用です。それも十数年前ですが、描いたときも久しぶりって感じはなく、いつも通りの美神だなって感じでしたね。僕の中ではまだ全然続いている現役のキャラたちです。
石川みんな元気なんだ、とうれしい気持ちになりました。 先生の中でまだ現役で生きて動いているとお聞きするのが、こんなにうれしいものだとは思いませんでした。
今回描き下ろしをしていただきましたが、先生の中で構図が決まって描き上げるまではどれぐらいの日数がかかるものでしょうか?
椎名他の仕事との兼ね合いもあってずっと描いてはいられないので、制作は3日ぐらいでしたね。
石川たくさん時間をかけていただいて、ありがとうございます。今日お持ちしたのは本当に今朝届いたばかりの見本で、ここからまた少し色味の調整などをしていきますが、シルクスクリーンという版画のようなプリントを使っています。優しい風合いで仕上げていこうと思っております。
椎名シルク印刷って、色落ちなどはどうですか?
石川弊社のシルクは3、4年着ていただいてるというお声もよくいただくので、気にならないと思います。
今の美神さんたちを発表できるのが本当に楽しみです。
■トートバッグ「あこぎな美神さん」
連載当時の思い出
石川作品の時系列で、2WAYトートバッグからご紹介します。『GS美神』1話の温泉での除霊のワンシーンを刺繍で表現させていただきました。今は試作段階ですが、切り替えで坂道を作るデザインです。
刺繍は顔など表現しきれない細部を一部省略させていただくことがあるのですが、それでもどのキャラかすぐわかるので、すばらしいキャラデザインだと思いました。
1話を描かれていた当時の思い出などはあるでしょうか?
椎名いや、初めての連載だったので毎週間に合わせるのでいっぱいいっぱいでした。本当に仕事しかできないしろくに寝れないしみたいな感じで、思い出とかそういうのじゃなかったですね。
石川やっと連載できるぞ、という高揚感はありましたか?
椎名もちろん、独り立ちできるとすごく張り切ってはいたんですが、「毎週原稿を上げる、間に合わなかったら終わり」というのはやっぱりすごいプレッシャーでしたね。その中でちゃんと自分の爪あとも残していかなきゃいけないので。
だから描いてるテンションもおかしなことになってて、今思うと大丈夫か? と思うぐらいでした。あんなの続けてたら死ぬだろうって感じでしたが、そのぶん今読んでもちょっと真似できないな、というぐらい変な勢いがありますね。
石川連載当時、僕はまだ小~中学生だったので、何も考えず雑誌で毎週読める喜びだけがあったのですが、大人になってから「ストーリーを毎週上げる」って大変なことだと気づきました。漫画家さんというのはものすごく大変なんだな、と思うようになり、だから本当にありがたいです。
この3人が1話から出てきて、最後のほうでは横島くんがとても強くなったりします。こういった展開は先生の中である程度、構想があったんですか?
椎名いや、連載開始前までおキヌはいなかったです。連載するにあたって編集者と話しあっていて、美神と横島だけだと「どつき漫才」がずっと続いて殺伐としてしまうので、何かマスコット的なキャラが欲しいよね、と。急きょ連載が決まったところで「じゃあ女の子入れましょう」と出てきました。
僕的にはキャラの成長を描く漫画ではなく、ずっと漫才をやっていればいいと思っていました。ただ、本当に若いころの自分の蓄積みたいなものを全部ぶちこんで描いていったので、そうすると20巻ぐらいで大概やることがなくなってしまうんですよね。
あとは再生産ばかりで新しいものが中々なくなってしまって。じゃあ、ちょっとうちの漫画は少年漫画の王道とはだいぶ違うから、王道をパロディとしてやってみようと「横島の能力がどうこう」の話になりました。
だから最初から緻密な構想があって……とかでは全然なく、ほぼ行き当たりばったりでしたね。
石川よく漫画で「キャラが1人歩きする」と言われますが、読者として『GS美神』はそれをすごく感じる作品でした。横島くんが10巻に1回ぐらいのペースで強くなっていくのをとても楽しみにしていて、しかも連続して強くなっていくわけではないのが逆に当時の僕には刺さりました。人の成長って階段状ですが、常に一定じゃないみたいなことを作品から受けていました。
横島くんもキャラ全員も素直でカッコつけてないというか人に見られてる感がなく、親近感を感じていて横島くんの成長がとても楽しみでした。
椎名ありがとうございます。
石川今回バッグのポケットの中に、山の神になったワンダーフォーゲル部員を入れているんですが、おそらく商品化は初めてのキャラですよね(笑)。
椎名わははは、当たり前じゃないですか。細かすぎますよ。すごい好きな人が作ってるなぁって内容ですよね(笑)。
石川担当デザイナーと「やっぱり必要だよね」と話しました。氷漬けのイメージもあるから内側は水色だよねなんて話をして、このカラーリングになりました。
椎名脇役ですが割とみんな覚えてくれているみたいなので、たぶんこれを買ってくれた人はニヤっと、エヘヘと思ってくれると思いますが。
石川我々は直近で読み返して商品のデザインをしているので全部の情報がフレッシュですが、当時『GS美神』が好きだった方が今いきなりコラボの発売を知っても、ちゃんと覚えている部分を商品化したいよね、と会議で話しました。
第1弾としてやらせていただく上で、どこまでやるか。厄珍は入れても大丈夫か? 僕はルシオラが好きだけど入れてもいいものか。六道冥子の式神を総柄にしたらおもしろいよね……なんてことをずっと話していました。
それで基準を「アニメを見ていた方」ぐらいに定めようと決め、今回は中心人物でやることになったのですが……それでもちょっとエゴが漏れたデザインになりました(笑)。
椎名ガチ勢ですね(笑)。
石川はい、まさにこのワンダーフォーゲル部員はガチな部分が出たものになっています(笑)。キャラとして初めての商品化ができてうれしいです。
トートバッグ自体が大きく使い勝手がいいですし、2WAYなので普通に手で持っても肩掛けにしていただいてもいいですし、パソコンも入る形になっています。なんなら妙神山に修行に行くときにも持っていけるぐらいのサイズ感です(笑)。
椎名なるほど(笑)。
■スウェット「除霊」
椎名先生のキャラ作り
石川続いて同じく『GS美神』の3人でスウェットを作らせていただきました。美神さんが採算度外視で豪快にお札を使うシーンが好きで、美神さんのバブリー感が出てるものが欲しい、とデザインさせていただきました。こちらはプリントで表現しています。
『GS美神』は実際にいたら仲良くなるのが難しそうなキャラ達がたくさん出てきますが、漫画を読んでいると全員好きになってしまうというか、愛せるキャラ達です。先生がキャラを生み出すときや内面をデザインされるときに、気をつけていることはありますか?
椎名自分で実感を持てないキャラは作らないようにしています。自分の中のいいところや悪いところ、馬鹿なところなど、必ず共感できて自分の中にいる人物を掘り出してくようにはしています。
「こいつエッチなやつだからこんなこと言うだろう」みたいに頭で考えることはやめようと。横島がエッチだとしてもその動機は別にあるだろうとか。自分が女の子にモテたいと思うときもただ「モテたい」と思うんじゃなくて、自分に劣等感があったり、あるいは承認欲求や人に認めてもらいたいとか、そういう生々しい感情がバックグラウンドにあったうえで漫画的に動く、というふうに作らないとキャラはただのお人形になっちゃうんじゃないかな、と思っています。
そういう生々しい部分を入れて「実際そこにいるんじゃないか」と錯覚できるようなキャラがいいキャラだと思うので、それは今もずっとやってますね。
石川今回読み返して、僕はキャラたちが悔しがってるシーンがけっこう好きだったのかなと思いました。横島くんが血の涙を流しているところや美神さんがお金を取り損ねて悔しい、みたいな感じが好きだったんだなと。大人になって読んだときにそこがリアルな部分だったのかな、と思いました。
椎名そうですね。描いていた当時はとにかく若かったし読者に伝わるようにと全力で、本当に100~120パーセントの出力で描いていて、今だったらちょっと過剰かなと思うぐらいのことをやっていましたね。
石川そういう意味で、勢いはすごく感じますね。
椎名うん、そうですね。
石川先生の中で「こういうキャラになると思わなかった」みたいなキャラもいらっしゃいますか?
椎名どうでしょうね……というのも、常に描きながら自分でも「どうなるんだろう?」とワクワクしたりしないと仕事が辛いばっかりになるので、どのキャラも「大体この子はこういう子だ」というのは僕が一番よく知ってる前提で「じゃあ好きにやってみて」とアドリブで仕事してもらってる感じがありますね。
ネーム(映画でいう絵コンテ、漫画の設計書のようなもの)を描いていて「確かにこういう流れにはなるんだろうけど、このままじゃ型通りすぎてつまんないな」というときに「じゃあ美神、君だったらここでどうする?」と聞いたら意外なリアクションがあったりして。毎回自分でセッションを楽しんでいる部分はありましたね。
石川じゃあ最初に「こんなお話にしたい」という構想通りにいかない、なんていうこともあるんでしょうか?
椎名もちろんあります。打ち合わせでは「こうなってこうなる」という話だったはずが、ネームを描いてる最中に「ちょっとその流れだと普通すぎてつまらないな」と手が止まる瞬間があるんです。
そうすると一旦手を止めて、キャラに「君ならここでどうする?」というのをしばらく自分の内側にこもって考える。するとふとしたときに「泣くはずだったところで笑う」とか意外な反応が出てきて、あ、その方がこの子らしいね、と思ったところからまた話を考え直す……という感じですね。だから割と『GS美神』は思い通りにいった話の方が少ないです。
石川そうなんですね。先生もある種リアクションを楽しんでいる面があるんですね。だから、僕らも読んでいておもしろいと思うんでしょうね。
椎名自分が描いていてゲラゲラ笑ってるような漫画じゃないと人も笑ってくれないだろうな、と思っていました。だからあのころは打ち合わせでも、担当と自分でゲラゲラ笑ってましたね。
石川その勢いと楽しさは読者としてもすごく感じていました。
椎名人には引かれましたけどね。「椎名さん、なんで自分の漫画で笑うんですか?」って。
石川そこは漫画家さんによってスタンスの違いがあるんですね。
椎名そうですね。
石川このスウェットの背面には当時の横島くんの時給である255円が入っています。これは今だったら本当にあり得ない時給ですが、当時も全然ありえなかったですよね。
椎名(笑)。もちろんそうなんですが、ちょっと中途半端にリアルにしちゃったなって今、後悔してます。
10円だったらあり得ないとわかるんですが、微妙にありそうな数字にしちゃいましたね。
石川それが好きでしたが(笑)。美神さんが時給あげてもいいよっていう話があったときに……。
椎名エミとケンカしたとき、うんうん。
石川結局上がり幅が5円だったのがリアルというか美神さんらしさがあって、とても好きなエピソードです。
■横島といえばこれ!パーカー「煩悩」
石川今回「横島くんで何か1つ作りたいよね」とデザイナーと話をしました。最初は(横島の開花した能力の)「文珠」も入れたいし「栄光の手(ハンズ・オブ・グローリー)」も入れたいし、とすごく盛り盛りなことを考えていたんですが、今回は試験に絞った方がいいかな、ということで「ゴーストスイーパー試験」のパーカーになりました。僕が好きな横島くんが成長するシーンです。
椎名これ、いいんですか? キャラグッズとしての視点はすごいですが、アパレルブランドとして大丈夫ですか(笑)?
石川パーカーとしてのパッと見ではフロントに横島くんの刺繍しかないので、そこまで派手な状態ではないと思います。
ただ、横島くんといえば煩悩。その「煩悩」を頭の中のという意味で、フードの中に入れました。
椎名わははは、これ本当に、大丈夫ですかね(爆笑)。
石川大丈夫です! 自信を持ってご紹介しています(笑)。外側にはバンダナの開眼した瞳のデザインを入れています。このバンダナ(小竜姫とのエピソード)もすごく好きだったんです。
椎名うん。
石川あとは、先ほどの話にもあった横島くんの時給255円をポケットのところに刺繍で入れて、袖口にロゴがあります。こういった商品ですけれども、いかがですか(笑)?
椎名ははは。なるほど、いやファンの人はゲラゲラ笑ってくれると思いますけど(笑)。
石川それこそゲラゲラ笑いながら作った商品ではあるかなと思います。
「煩悩」を頭の中(フードの中)に入れましたが、昔と違って今描けないシーンみたいなものもあるんですか?
椎名どうでしょう……コンプライアンス意識みたいなものは当時とずいぶん違うので、今だと無理そうな表現はありますが。さっきお話したように、横島の根っこの部分は別にスケベがメインではないと僕は思っているので、差し替える方法はあるでしょうね。根本的になくなるっていうことはないかと思います。
石川大きくイメージがずれるようなことはなさそうですね。涙を流しているところだったりとか、直前に女湯を覗いているシーンから引用しましたが……。
椎名そういうのを描くのは今絶対アウトですよね。実際にやるのは昔からアウトだけど、漫画に使うだけなら昔はできてたので。
石川ということで、シーン全体というより主に横島くんのリアクションの方にフォーカスして使わせてもらってます。フードの中にして、やっぱり内側(内面)にあってほしいなという思いまで表現しました。商品を見てぜひ笑っていただきたいですね。
椎名内に煩悩を、ってことですね。
石川はい。いずれ「文珠」の商品なども作りたいと思っています。横島くんが強くなっていくのは新しい展開を王道パロディでやったからという話は『椎名高志の漫画術』にもありましたが、ほぼ最強になっていきますよね。美神さんをも超えるという設定は、ゴーストスイーパー試験のタイミングでも既に構想にあったのでしょうか?
椎名いや、僕としてはキャラを成長させて変化させるような漫画ではないと思っていたので、強くなる要素はある種おもしろさとして入れましたが、それでキャラ同士の人間関係が変わったり、キャラが本質的に成長して別人のようになることはないと決めていました。
だからいくら霊能力で強くなっても横島はずっと下っ端のままだし、美神たちとの関係も変わらない、というふうに作っていました。あとは漫画の作劇上便利になりすぎないようにがんばるぐらいで、特に難しいことは考えてなかったですね。
石川そこもやっぱり僕が好きだったところだと思います。最初から読んでたら「まさか横島くんがあんなに強くなるなんて」と思いますし。強くなっていくのは漫画表現でよくある展開でもありますが、キャラが作中で見直されていかないのはなかなか珍しいです。
椎名見直されちゃうと横島じゃなくなっちゃうので、こいつはずっと何か餓(かつ)えてて、男の子としての根っこの部分が足りなくて、それをガツガツ埋めたいと思っている子なので、そこはやっぱり満たしてしまったらダメだろうなと。
石川一瞬見直されても、すぐ「やっぱり変わってないな」という姿を見せてくれるのがうれしいです。
椎名やっぱり人間って、成長とか能力とかじゃないんですよね。基本的に人間力なんですよ。僕もおっさんになってそういうのがわかってきたんですが、当時の感覚は正しかったと思いますね。
石川とても愛されるキャラクターですね。
椎名ではあると思います。
石川人として生きていくうえで「かっこよくなろうとしなくてもいいんだ」みたいなことを、僕は横島くんに教わったような気がしています。それぐらい本当にがっつり読んでいました。
椎名そうですね。割と自分の中のダメな部分を「ダメでもおもしろいからいいじゃない」と肯定的に描いてやろうとはしてた子なので、今でもすごい愛おしいところだなと思います。
石川『GS美神』商品では、全アイテムにそんな横島くんがいるということになっています(笑)。
椎名ははは(笑)。
■Tシャツ「美神令子除霊事務所」おキヌちゃんのエピソード
石川美神令子除霊事務所の三角関係、美神さんと横島くんの関係の距離感もすごくいいんですが、王道ヒロインであるおキヌちゃんも蘇ったときにすごくびっくりしました。当時「あ、すごくいい展開」と思ってうれしかったです。
生まれ変わってネクロマンサーになるシーンもとても好きなんですが、自転車を2人乗りする横島とおキヌちゃんと、それをちょっとギリギリして見てる美神さんもいいなと思ってTシャツのバックに入れさせていただきました。美神さんが二人のあとをつけてるんだろう、みたいな感じです。
夏っぽいデザインではあるんですが、季節的にはこれから冬に入っていくのでフロントにプリントを入れ、何か羽織っても作品が見えるように時期的な展開にもなっています。
おキヌちゃんが蘇る展開も、当初から考えていたものではなかったんでしょうか?
椎名実は最終回にやろうと思ってたんです。でも『GS美神』を20巻ぐらいまで描いて「この先は再生産になっていくかな」と感じたときに、あとでやるからとネタを置いておくより、自分の中にあるネタの中で1番おもしろいものはもう先にやっちゃえ、終わったあとでまたその先を考えればいいや、と思って描いてしまったんです。
そのときは若かったので突っ込んじゃって、だから描いてるときは楽しかったんですが、終わったあとやっぱり困りましたね。どうしようと思って。
石川ちょっと話の切り替わりみたいな感じで、おキヌちゃんが学校に入って学校での人間関係を新しく構築していくとか、横島くんが先輩ゴーストスイーパーとして導くとか、またちょっと立ち位置が違ってくる展開が「まだまだこの漫画おもしろいな」と思っていました。
そういうドライブ感というか長期連載だからこそ変わっていく感じが、長い間読んでいてもずっと飽きなかったなと思っています。「あのシーン読みたいな」と、例えばゴーストスイーパー試験のところを読もうとすると大体また最後まで読んでしまうんですが、ずっと味がするという感じで。ずっと楽しませてもらっていました。
どうしてもちょっとファン目線が強すぎるコメントになってしまいますね(笑)。
椎名強いですね(笑)。
■パーカー「ザ・チルドレン」
メインキャラへの想い
石川僕が世代的にがっつりハマったのは『GS美神』で、終わったあと寂しい思いがあった中『絶チル』が始まって……ということで、今回は『絶対可憐チルドレン』も商品化させていただきました。
まずパーカーのデザインから。作中の国家組織「B.A.B.E.L.」(以下バベル)の文字とチルドレンの3人を刺繍で入れています。パーカーのカンガルーポケットを主人公の(明石)薫が持ち上げているデザインにして能力を表現しました。
先生は他のインタビューの中で「主要キャラみんなが超能力を持ってるので、新しい能力よりわかりやすい能力を持たせるようにした」とおっしゃっていました。それぞれテレポーター(瞬間移動能力)やサイメトラー(接触感応能力)にするというのは、「この子の性格にはこれが合うだろう」みたいな思いがあってですか?
椎名3人で1つのキャラだと思って作っていて、不器用な子どもが持ってる個性の凸凹みたいなものがそれぞれにあればいいかな、という感じでした。
だから能力は古典的でベーシックな超能力の中から、わかりやすいものを3つ選ぶということで。(三宮)紫穂はテレパスでもよかったんですが、触って能力を発揮できる方が漫画的におもしろいだろうということでサイコメトラーにしました。
石川そういうことだったんですね。キャラ全員が魅力的だから誰が1番人気なのかは気になります。読む人によって好きなキャラが違うかとは思うんですが。みんな魅力的でどうしてこの能力になったのかな? というのは読みながら思っていました。
椎名才能はあるけど凸凹した個性でうまく社会に溶け込めない子が、優しいお兄さん(現場運用主任・皆本光一)に指導してもらって折り合いをつけていくという話なので。お兄さんが女の子に困らせられるっていう点で、女の子が複数いていっぺんに文句言われたほうが男も困るじゃないですか。そういう感じを出すために3人にしましたね。
石川連載が始まった当時から、63巻まで連載が続くというのは想定されていましたか?
椎名いや、全くしていなかったですね。本当に1年やれればもう御の字で、実際に単行本1巻の段階でやりたいことは全部やりきって「これでもうダメだったらもういいです」というところまで行ってましたね。
石川先生の中でも、こんな続くとはっていう感覚だったんですね。
椎名そうです。まさかって感じでした。
石川作品に込めた先生の思いがもっと気になる方はぜひ『椎名高志の漫画術』をご覧ください。
とにかくすごくおもしろい作品で、本当に魅力的なキャラが多いです。
■勢ぞろいTシャツ「絶対可憐チルドレン」
壁に埋まった○○?!
石川次はTシャツです。キャラがみんな魅力的で選べないので、なるべくたくさんのキャラを入れたい、ドロシーや松風(浩一)くんなども入れたい、という思いで最終巻である63巻の表紙を使わせていただきました。色数を少し調整して、Tシャツとして着やすくデザインしています。
ただ、グラニフはどんどん「着やすい」の概念がなくなっていくブランドでもあります(笑)。
椎名そうなんですね(笑)。
石川グラニフは「好きな作品やキャラのものを着ていたら、その日の気分が上がるよね」ということを伝える……だとちょっとおこがましいですが、僕はそうだしみんなもそうなったらいいな、ぐらいの感じで伝えたい、というブランドなんです。なので、なるべくキャラ多めで作らせていただきました。
『絶チル』の中で先生のお気に入りのキャラはいらっしゃいますか?
椎名そうですね……チルドレンの子たちで嫌いな子はいないので、みんなそれぞれ好きでやってますが、やっぱり兵部(京介)はちょっと特別な子ですね。
石川それは読んでいてもなんとなく伝わってきます。内面を掘り下げる回と言っていいのかわかりませんが、それをけっこう一人一人しっかり描かれている感じがしました。
椎名『GS美神』と同じで、キャラの中に嘘が入っちゃダメだというのはありましたね。漫画的なデフォルメやギャグになってても、どこかしら「人間こういうとこあるよね」という部分は入れていこうというのは『絶チル』でも徹底していたので、そのあたりは大事にやっていました。
石川先生の作品を商品化させていただく上で、コミカルなシーンを入れないわけにはいかない、という思いがやっぱりあったので、皆本さんには壁に埋まってもらいました(笑)。
椎名ははは(笑)。
■スウェット「少佐」兵部京介の誕生秘話
石川人気があるキャラで先生の思い入れもあるという「P.A.N.D.R.A」(作中のエスパー犯罪者集団。以下パンドラ)のリーダー兵部を、プリントスウエットでデザインさせていただきました。
兵部が誕生した経緯は、どんなところからだったんでしょうか?
椎名子どもが道を間違えないように指導していくストーリーだったので、皆本がやはりきれいごとばかり言うんですよね。描いていて決してそれも嘘じゃないんだけど、やっぱり現実にはうまくいかないこともあるので、その清濁の「濁」の部分を代表するキャラが必要だろうと。
それで兵部のような悪役が出てくれば皆本に緊張感も生まれるし、チルドレンが失敗したときにどういう悪人になるのかというのも表現できるだろうと思って入れたキャラです。いわばトリックスターとしてだったんですが、描いてくうちにだんだん「こいつが本当の主人公なんだ、裏主人公なんだな」というのがわかってきて、そのへんから予測したわけじゃないのにとても重要なキャラになっていきましたね。
だから僕にとっても大事な仕事の相棒というか、作った子じゃなくて勝手に出てきてくれた感じの子です。意外と女性人気も出て、全く狙ったり意識したわけではなくて一生懸命描いていたら皆が喜んでくれたので、すごく特別な子ですね。
石川悪役ですが共感できるキャラで、すごく魅力的ですよね。読んでてもどう動くのかがわからない、何をするつもりなんだろうと、どのエピソードを読んでいても真意が読めない感じがあって。読者としてももっと知りたい気持ちになりました。
■「P.A.N.D.R.A」メンバーブルゾン
石川『絶チル』を語る上で、兵部1人だけでなくやはりパンドラをメンバーで語りたいというのもあって、こちらも欲張ってほぼ全員いるアートでブルゾンを作りました。先ほどの兵部のスウェットの上に羽織っていただけたらと思います。
椎名ああ、かっこいいですね。
石川こういうデザインなので胸に何を入れるべきかデザイナーと話したんですが、「P.A.N.D.R.A」とマークを胸に入れるよりもうちょっとひねりたい思いがあり、伊号(予知能力者のイルカ)の姿を入れさせていただきました。
椎名ああ……(笑)これは禍々しいですね。
石川パンドラのメンバーで兵部以外のお気に入りはいましたか?
椎名パンドラの連中はのびのび描いているのでみんな割と好きなんですが、やっぱりメインの真木(司郎)、(加納)紅葉、(藤浦)葉、の3人組ですね。チョイ悪な不良が大人になって落ち着いて仲良くやってる感じってのは、すごい好きですね。
石川何か特別な結びつきがあるというのを読んでいても感じましたし、そういう組織だからちゃんと成立しているんだというのを感じて、とても好きでした。
椎名うん、大人になれない不良少年の集まりってイメージだったので、みんなそれぞれ寂しいのか、身を寄せ合ってるっていうので、僕も描いてて愛着が湧きましたね。
石川バベルのメンバーと会ったとき、ちょっと羨ましそうにするシーンがたまらないです。
ブルゾンはこれからの季節のアウターとして着ていただけるものになっています。
■伊号の予知ハット「未来」展開のこだわり
石川伊号のハットを作らせていただきました。先生に禍々しいと評していただいた伊号の姿とイルカの姿が反対に入ったデザインです。
頭部に何か意味を持たせがちなグラニフなんですが、伊号の脳内で何がされているかというと予知なので、全体を通してのキーとなる伊号の予知した未来のシーンを内側に込めさせていただきました。伊号の姿と伊号が見た未来の面を、リバーシブルで楽しめるハットです。
発想は横島パーカーの「煩悩」にだいぶ近いんですが(笑)。
椎名なるほど(爆笑)。これもうアートじゃないですか。
石川頭に着用するもので何を表現するべきかとなったときに『GS美神』の中では「煩悩」で『絶チル』では「予知」かなというので、未来のシーンを選ばせていただきました。
椎名表現主義ってやつですね(笑)。
石川はい。意味を持たせたくなってしまうのはそういう面もあります。
序盤の1巻から先生の中では、未来の予知として「こうなってしまう」と先に見せようと決まっていたのですか?
椎名そうですね。「この子たち、ちゃんと育てないと大変だよ」って話をしてたから、じゃあちゃんと育てられなかったらどうなるのかというのは描いて見せないとダメだろうってことで入れたんですよね。
石川この通りに育つ未来になるのか、それとも未来は覆されるのかっていうのは、決まっていなかったんでしょうか?
椎名いや、普通に考えたらあの漫画であんなバッドエンドはあり得ないので、未来を覆す話にはなるだろうなっていうのは考えていましたね。
石川なるほど。読者としてはそのままいかないだろうと思いつつ、見えてることが実際に起きたらどうなるのかとか、先生の中ではどう決まってるんだろうというのはずっと気になりながら読んでいました。連載が長いので僕ら読者の中でも考察が行ったり来たりしていましたね。
椎名あれを描いたところで「あとはみなさんご想像で」というのが漫画のセオリーだと思うんですが、連載が続けられるとなったときに描かなきゃな、と思いました。小学校卒業で終わるぐらいだろうと思っていたんですが、アニメ終了のタイミングにあわせて漫画も小学校卒業を描いてしまったので、これは実際に最後までやるしかないという感じになって。
本当だったらいつかああなるかもしれないけど、でもみんなで一生懸命未来を信じていこうよ、と終わるのが本来の形ではあるかと思っていました。
石川中学生編、高校生編と展開していくのは長期連載ならではのことだったんですね。
椎名そうです。本来は小学生時代でずっと回していくのがあの漫画のスタイルだとは思ったんですが、先ほど言ったようにアニメにあわせて小学生編を終わりにしたので、じゃあもう実際に予知を覆すか覆せないのかってところまで時系列を追っていこうと。で、そうしたらちょっと大河っぽくもなるだろうと。
僕『赤毛のアン』がすごく好きで、薫の髪が赤いのもそれだからなんです。美神は赤いけど関係ないですが(笑)。
『赤毛のアン』は、学校卒業して進路を考えたときに養父母の状況が変わってしまって、自分の進路について改めて大人として考え直すところで1冊目が終わります。だから『絶チル』もそんなような区切りのいいところで「この子たちはもう小学生じゃなくて、大人に1歩踏み出したんだよ」と終わろうと思ってたんです。女子大生編まで描くのはちょっとないなと思ったので、高校生でさすがに終わりだろうというのもありました。
石川成長していく過程が明確にあるっていうところで、ビジュアルが大きく変わる感じではなかった点も『GS美神』と違うところなのかなとも思いました。(横島くんは成長しましたが)
椎名そうですね。『GS美神』は一話完結でぐるぐる回していくような『ドラえもん』軸の漫画なんですが、『絶チル』はちゃんとキャラの成長を描いていこうと思ったので、だんだん子どもだった子たちが魅力的な大人になっていくという部分は、ちゃんと描いてやりたいなと思っていました。
コレクションの感想と椎名先生のお気に入りアイテム
石川こんな感じでどこまで深掘るか悩みながら商品化させていただきました。好きがゆえにどうしても深くなってしまうのはあったんですが、どうでしょうか? 実際こういうコレクションになっての先生のご感想をお聞かせいただければと思います。
椎名本当に僕の漫画が好きでやってくれてるんだな、というのはひしひしと伝わります。ありがたいですが、逆にいいのかという。イベントで出るようなキャラグッズとしてはおもしろいんだけど、ブランドのグラニフさんでやって大丈夫なのかなとは、本当に思いました(笑)。
石川表現しきれなかったものは第2弾、第3弾とやれたらいいな、うれしいなと思っています。特にこの記事を読んでいただいてる方には他のアイテム、例えば「次はフードの中が何になるのかな?」とか、もし靴下になったらどうなるか、と想像していただいて、次も欲しいと思ったらぜひ今回も購入していただきたいです。
椎名あと、先ほど「好きなものを着たら気分が上がるだろう」とおっしゃっていたのはすばらしいと思いました。
石川小さい頃にスーパーヒーローが好きで、そのヒーローの靴を買ってもらってうれしかった、みたいなことが大人になるとちょっと再現しづらくなりますよね。今はみんなスマホに好きなものが入っていて、外から見えづらいというのもあって。
でも好きなものを身に着けていると、普段行くコンビニなどでも「それどこで買ったんですか?」「○○好きなんですか?」という会話が生まれたりします。そういう体験をしていただきたい、という思いはありますね。
それから、これはグラニフのビジネスとはちょっと違うかもしれませんが、グラニフで商品化されることでそのアイテムを見かけて「この漫画おもしろいのかな?」「昔読んでたな、懐かしいな、もう1回読みたい」と思っていただけたり、椎名先生の作品に新たに出会っていただくチャンスまで我々が作れたらうれしいなという思いもあります。ぜひそういうきっかけになればと思っています。
石川今回のアイテムの中で、先生がお気に入りのアイテムをあげるとしたらどれでしょうか?
椎名そうですね、まだ全部の完成形は見ていませんがパンドラのアイテムはかかわいですね。『GS美神』ならパーカーが割と好きです。
石川ありがとうございます。先生ご自身が着られる可能性はありますか?
椎名僕、来年還暦なんですがいいんですかね、さっきの話のように「好きなもの着て」?
石川はい、ぜひテンション上げて下さい。
椎名僕は結局サイズ優先なので、サイズがあうかどうかがまず第一になってしまうんですが、大きいサイズのラインナップはありますか?
石川TシャツはXLまでご用意しています。そもそもブランド全体で大きめに作っていて、他のブランドのXLより大きくなっています。
今までもイラストレーターさんや漫画家さんにお話しさせていただくことがありましたが、その中でご自身の作品のものを着るのは「俺だぞ!」と言ってる感が出てしまって気恥ずかしい、という話が多くありました。先生もそうでしょうか?
椎名そうですね。かと言って、他の人の作品を着るのも違いますね。青山剛昌先生に会うときに『名探偵コナン』のTシャツを着るとかはアリだと思いますが、普段着るのは違うだろうと。
石川やはりそういうのはあるんですね。
今回のコレクションは先生のファンの方がたくさん着てくれると思います。ファンの方に「こんなシチュエーションで着てもらいたい」みたいなことはありますか?
椎名どうでしょうね……例えば何か別のものを羽織ってるときにチラっと中に着てくれてる、とかでしょうか。やっぱり着ることでちょっとうれしくなるような使い方をしてくれると、僕もうれしいかな。
石川最後に、椎名先生のファンの皆様に一言お願いします。
椎名宣伝でもいいですか? 今は少年サンデーSで高橋留美子先生と隅沢克之さんとコラボして『~異伝・絵本草子~ 半妖の夜叉姫』を連載してますので、そちらもよろしくお願いします。
石川ありがとうございます。インタビューは以上になります。
椎名ありがとうございました。
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Profile
椎名 高志
漫画家。1965年大阪府生まれ。代表作に『GS美神 極楽大作戦!!』『MISTERジパング』『一番湯のカナタ』『絶対可憐チルドレン』など。現在は少年サンデーSで『~異伝・絵本草子~ 半妖の夜叉姫』(漫画/椎名高志 メインキャラクターデザイン/高橋留美子 脚本協力/隅沢克之 )を連載。漫画への思いや裏話、イラストカットが豊富なブログ「(有)椎名百貨店 THE WEB」も更新中。
ライセンスプロデューサー
石川 祐
グラニフのコラボレーション責任者。コラボ商品の企画立案から商品リリースまでを総合プロデュース。作家や作品に寄り添い、一人のファンとして、商品開発に取り組んでいる。趣味はエンタメ全般、他人の趣味の話を聞くこと。
編集:石川祐/文章:kao/写真:泉大悟