不定期連載「コラボの原産地」がはじまりました。

コラボレーション商品を紹介することを口実に作家さんのアトリエやご自宅にお邪魔して
制作秘話を対談する企画です。

今回インタビューさせて頂くためにご自宅にお邪魔させて頂いたのは、イラストレーター中村佑介さんです!
役得すぎるインタビュアーを務めるのはグラニフのコラボレーション担当の石川です。

お仕事でご一緒することになり約3年、
前回のコラボレーションでは東京と大阪でトークショーなども一緒にやらせて頂き、
ほぼ毎週オンライン画面越しにはお話しているのですが、ご自宅へは初めておじゃましました。
(初回のコラボレーションの経緯はこちらをご覧ください。)

アイテム 01

SNSのコメントから生まれた
「明石さんのワンピース」

石川早速ですが、今回第3弾のコレクションの中で一番思い出深いラインナップからお話を伺いたいと思います。

中村さん (以下、敬称略) 思い出深いのはやっぱり描き下ろしと明石さんのワンピースですね。SNSで「欲しいんだけど他のお店には全く同じ形のはない」とか「自分で作ってみた」等のご意見をたくさん頂いていて。

石川そういったファンの方の投稿を中村さんが僕のアカウントのタグを付けて「だって、石川さん」ってパスを投げてこられるので、それが全ての始まりでしたね。

中村そして決まる前から「どっちの色がいいですか」とか値段とか形とかSNSで勝手にアンケートを取ってしまっていたんですよね。だから今回の明石さんのワンピースの話題は第2弾の前ぐらいからあって、今回出るのが第3弾のタイミングになったけど実はずっとファンの方たちと一緒に計画を作ってたんですよね。だから時間がかかりましたが良い形で実現ができたなと思いますね。ありがとうございます。

石川丈の長さだったり、サイズ感だったり僕の知らないところでアンケート取ってくださってましたね。(笑)

中村Tシャツだったら男女兼用できるけど、ワンピースって僕らはなかなか着ないじゃないですか。身体のラインも違えば、身長によるスカートの丈の絶妙なかわいさとかわからない。他にもアニメ通りのデザインで作りたいんだけど、やっぱり普段着るにはセーラーの襟はちょっと可愛すぎて着れなくなっちゃうっていう意見があったので、アタッチメント式の襟にしたり。僕だと全然気が付かないところが多かったので、アンケートは取るべきだなって。ちゃんと作る前に意見を聞くべきだなっていうのは痛感しましたね。

石川グラニフというブランドは、「グラフィックで生活に彩りを感じてもらいたい」っていうブランドではあるので、やっぱ普段着にしてもらえるようにということでアタッチメント式の襟を提案させていただいて、全体的にバランス良くなりましたよね。SNSでファンの方の意見を拝見してデザインして、サンプル作って、社内の女性デザイナーをモデルとして写真撮った上で中村さんに見てもらったりしましたね。そこでちょっとここのラインの太さを変えようとか、ポケットの上のラインがやっぱり欲しいとかっていうような意見をいただいて、このワンピースが出来上がりましたね。

中村実際立体になってみると、その通りにはなっていても、リボンがちょっと太過ぎたり細すぎたりとか、そういうのがあるんですよね。だから毎回、勉強というか、衣服は平面のデザイン画では全くわかんない。あと、ポケットの中まで見て欲しいですね。

第1弾、第2弾の時もデザイン画の段階で、「いやこれはないです」とかこれまで言っちゃってたんですけど、今回は全部グラニフさんの意見を聞いてみようと思って。デザイン画で「どうかな」と思ってたデザインも石川さんが「一応作ってみました」っていうそっちの方が絶対かわいかったんですよ。だから今回のラインナップっていうのは、基本的にはもちろん僕が監修はしましたけれども、グラニフのデザイナーさんがちゃんと考えたものをそのまま形にしてもらうっていうのをやってもらいたいなと思って。

描き下ろしイラストは結構自分でやりたいデザインとしてコメントしましたけど、他のアイテムはデザイン画時点ではピンと来なくても、これまでの経験があったので絶対そんなことないなと、信じてお任せしました。

アイテム 02

グラニフを信じて任せた「翼シャツ」

石川第1弾、第2弾と、使用するアートを変えて第3弾っていうよりは、中村さんとのやり方も少しずつ進化させていっての第3弾ですよね。そういった意味では作品のアレンジの仕方を変えさせて頂いたという点で、この「翼パターン」のシャツなんかは、中村さんの元々の作品があったものを、どうやったら総柄にできるかなって作らせてもらいましたね。このアレンジの仕方って最初どう思いましたか?

中村総柄は今までもあったので絶対良くなるだろうなっていうのと、これまでで痛感したのが、「もっと色明るい方がいいです」って言ったら洋服としてはそこまで手に取ってもらいにくくなるというジレンマがありました。絵っていうのはあくまで映画を観るのに近い体験というか、完全に額縁の中で完結してしまって箱庭を楽しむものだけど、アパレルってやっぱりそれを着て出かけるっていう前提があるじゃないですか。

だから今回も、これ元の絵だったらもっと明るい紺色じゃないですか。だけどちょっと青緑っぽい少しくすんだ色になってるのをデザイン画で見たときに「色が違います」って言おうとしたんですけど「いや、そんなん分かってるよな」って。だからこれでちょっと信じて出してもらおうと思ったら、やっぱりね!着やすいんですよね(笑)グラニフさんはコラボはマニアックにするけどちゃんと一般層にまで届くデザインに落とし込むという、ユニークでありつつ、奇抜まではいかない、面白いけど、変まではいかないっていうか。だからその辺多分、バランス感覚は一番今まで気にされたと思うので、もう信頼って感じです。

石川これまでの第1弾、第2弾の経験も踏まえて「グラニフが思うアレンジでもっとやっていいよ」って言っていただいたので、ゼロからアレンジを提案させてもらうようになって、それが第3弾で一番大きく変わったところだと思っています。

アイテム 03

モチーフをズラすことで新たに見えた景色

中村例えば、「夜は短し歩けよ乙女」のこの長袖Tシャツなんかは、以前だったら絶対こうやって先輩を元のイラストにいた位置から抜き出して離すなんてしなかったと思うんですよね。できるだけ背景込みでどうやって元のイラストを活かすかって発想になって、背中にドーンとプリントするしかないってなっていたと思う。そういうのは、もうそろそろいいんじゃないかなっていうか、やっぱり中村佑介グッズとしては正しいのかもしれないけど、グラニフのアパレルとしては違うんじゃないかなって。

ただ、自分も自分の絵は大切にしたいっていうのもあったし。だから、第1弾、第2弾とやってきたから第3弾からはもう、そういう幅を持たせて半分ぐらいは服として良いデザインになるように使ってもらう方が絶対長く着てもらえるものになると思ったんです。

石川決して第3弾のものが第1弾に出ててもおかしくなかったっていうことではないんですよね。これまでの蓄積があって、信頼いただいた3回目じゃないとできないっていうのはありましたね。ただ、こういった元々のイラストから変更するデザインに許可をいただくってことは、同時に中村さんの作業が増えるということでもありましたよね。

中村そうですね。だから描き下ろし以外も結構今回描いてるんですよね。いろんなアイテムにするときに、イラストとして切れてしまっているところを描き足したり、位置変更したり、いろいろやってますね。

石川グラニフに任せていただける分、中村さんが楽になったかというと、むしろ作業増えるっていう(笑)

中村でも楽しいですから(笑)まるでイラストレーターのベジェ曲線で描いているような絵なので、色んな仕事で「レイヤーが分かれたデータありますか」って聞かれるんですけど、そもそも存在しないんですよね。基本的に紙に一枚絵で描いているから、レイヤーは1枚しか存在しないんです。だから洋服にする時に何かモチーフをズラすってことは、隠れていた後ろは新たに描き直す必要があるんですよね。立体的に自分の絵がまた歩き出すみたいな、そういう楽しい経験でした。

石川すでに発表されている作品とグラニフで洋服になった時とでどこが違うのか、そこを見つけていただけるとお客様も楽しいんじゃないでしょうか。

アイテム 04〜07

グラニフのビジョンを描いたアイテム

石川アレンジさせてもらったデザイン以外にも、描き下ろしイラストもTシャツと、長袖Tシャツ、ステンレスボトル2種類と4アイテムになっています。一番中村さんの初期イメージに近くなったのは長袖Tシャツかと思いますがいかがですか?

中村実はこれ第2弾用に描いていたんですよね。だけど、1枚だけ絵を描いてそれがバンとプリントされるみたいなのが嫌だったから、全体的にデザインはどうなるかわからなかったけど、たくさん絵を描いて、それを素材としていろんなアイテムにしてもらおうと。アイテムでこそ映えて画集に載せてもよく分からないような作品を描かないといけないっていう想いがありました。だから合計4〜5点描いたと思いますが楽しかったです。

石川最初に描き下ろしイラストを拝見した時に、ものすごいグラニフの要素を入れていただいたなと嬉しかったです!

中村グラニフというブランドが「グラフィックを着て出かける」とか「街や生活を色づかせる」をメッセージとしていると石川さんから聞いたので、それをそのまま絵にしたらいいんじゃないかと考えて、額縁の中だけ色が付いて外に持ち歩いてるというイメージをそのまま描きました。やりすぎたら駄目だなと思って、あくまでグラニフとかgのマークが入ったときに、そこが一番、目立たないといけないと思って。

石川こんな大きな自社ビルはないんですけどね。(笑)

中村(笑)きっと未来はこうなるんですよ。すごいでっかいビルってなっていくんですよ、グラニフは。

石川長袖Tシャツでは、中村さんのこだわりの信号ポケットもポケットの生地とTシャツ本体の色とが実はちょっと違ったので、調整しましたね。

中村結果的に色もばっちり出たし大満足です。それと今回ステンレスボトルはかっこいいのができました。ほんとこのボトルめちゃくちゃいいですね!

石川アンブレラボトルの方は本体の黒を利用したプリントになってて良いですよね。

中村このボトルシリーズを作っているのも楽しかった!サーモマグの方は全面プリントしたときに、ぐるっと回って重なる部分で少しだけ絵と絵が重なってる部分ができてしまってそこだけ色が濃くなって縦線のように入っちゃうのをどうやって打開しようかってみんなで試行錯誤したのが、楽しかったですね。

石川それを不自然じゃない感じにするにはどうしたらいいかは、他のサーモマグでも苦心しましたね。

アイテム 08〜09

イラストの外の世界を描き足す意味

中村この「ソルファ」のイラストも元々は両端が切れてたので、木や校舎をぐるっと回すために描き足したんですよね。「糸瓜」も絶対背景の色が重なっちゃうから、白を入れてロゴ入れましょうとか、意図的に綺麗にちゃんと見えるような工夫をしていますね。

石川グラニフが雑貨を始めてまだ日が浅いのもあって、個人的にもすごく勉強になりました。一緒に新しい挑戦をさせていただくことで、いい商品を作るっていう過程の中で、学びが多いなっていうのもすごく思い出深いです。

中村日常の用途があるものは、やっぱり面白いですね。今まではグッズのTシャツはあったけど、日常で使う物と言ったら、塗り絵とかポストカードとか、コレクションするものに近いものばかりだった。やはり実際に使う物だと、どうやったらお客さんに手に取ってもらいやすくなるかとか、どの絵が良いのか、とか今まで20年やってきたけど全くノウハウがないんです。

石川画集では円柱にぐるりとプリントすることはないですからね。

中村入れないですね。だからぐるっと繋ぐために、「糸瓜」では葉っぱの端っことか描いてますよね。こことかこことかもう全部描き直しです。(笑)

石川イラストで描かれるときは端が切れていることによって、よりその世界の続きを想像できるっていう余地があってそれが作品の良さに繋がったりすると思うんですけど、いざ商品になるとプリント範囲の問題で切れてしまっているという印象になってしまうのは大きな違いかもしれませんね。

中村名画とかで切れている周りを付け足されたら「何してんねん」って思いますけどやっぱり商品としては端っこまで描かれているデザインの方が、絶対かわいいし、愛着出ると思ってたんですよね。グラニフさんは制作時間も長いし、いろいろな工場とお付き合いがあるから基本的に何でもできるじゃないですか。本当はこれまでも裏側までぐるっとプリントしたりしたかったのにっていう僕の20年のこのストレスがここで爆発してよかった!解消ができました!!

アイテム 10

パッケージまで世界が拡がる腕時計

石川使うものっていう意味で今回初めて時計を作りましたね。

中村時計は一番時間がかかりましたね。第2弾の終わりからもう時計だけは先に進めましたもんね。

石川文字盤の入り方だったり、何回かサンプルを作って完成させて、その後は外箱のデザインにも悩みましたからね。第2弾の発売記念のトークショーでご一緒している時にも裏で時計の話をしていましたよね。中村さんは時計を作りたいと思ったことがありましたか?

中村いや、全然想像もしていなかったですね。でもやってみたら、だんだん形になっていくのがいいなと思いました。制作過程の中で徐々に「だからこの絵を選んでもらったんだ」って納得もしていきました。

石川文字盤のデザインも何パターンか、女の子の横顔とかも提案させていただいたんですけど、結果これになって良かったですよね。

中村ちょうどこの絵が縦長で、上が青、下が黄色みたいになるのもすごくかわいい。元々数字が入っていた部分を利用して、同じフォントで数字を作ったりとか、楽しかったです。

石川既存の作品でこの細長く縦にトリミングして成立するものって他にないですよね。

中村特に最近は、ウェブ上の画面の影響で横長になることも多いですから。

石川作品とうまくマッチした良い時計ができましたね!

中村箱のまま飾っててもいいぐらい可愛くできてますね。

石川色がついている時計と、モノクロで線画になっている箱の世界との拡がり方がまた新しい発見がありますよね。こういうステップを踏みながら、デザインの幅やアイテムをいろいろ増やしていけたら幸せですね。

アイテム 11

1着で2着分おいしい「モッズコート」

石川今回、初めてモッズコートを作りました。いかがでしたか?

中村めっちゃカッコ良いし、機能性もあって、実際僕も重宝すると思います。ライナーコートっていうもの自体が初耳だったから、最初モッズコートとかライナーコートとか、何の話してるんだろうみたいな感じでしたけど。(笑)

石川冬のぽんちゃん(中村さんの愛犬)の散歩とかに是非!

中村後ろもインパクトありますけれども、基本的には前から見たら何もないデザインが良いですよね。例えばレストラン入って、コート脱いだときに内側の総柄が見えるみたいな。タトゥー感あって、いかつい感じがかっこいい!このライナー自体も取り外しできて、ライナーだけでも着れちゃう。実質、2着ついてますからね。

石川このライナーコートのイラストが綺麗にプリントされるという苦労も、もうなんか当たり前のようにやってるので話し忘れそうになりますね。

中村似たような素材でグッズを作ったことありますけど、こんな綺麗にプリントされることないですからね。この素材は絶対ガタガタでぼやーんとしたプリントにしかならないので不思議でした。

石川生産チームに頑張ってもらいました!

中村グラニフさんの仕事でわかったのは頑張ったらできるってこと。「頑張ってもらったって具体的に何したんだろう?」って毎回思ってました。頑張ったらできるもんなの?そんな精神的なものなのって。(笑)

アイテム 12〜13

暗黙のルールを破ったデザインの「パーカー」

石川モッズコートのライナーを抜いて、パーカーとか合わせてもらっても着やすいと思うんですよね。今回パーカー2点作っていますけど、全然違うタイプの2点ですよね。

中村いやあ「コラージュ」のパーカー、めっちゃくちゃかっこいい!これデザイナーの木村豊さん(CENTRAL67)が、アジカンの映像作品集のジャケット用にコラージュしてくださって。僕は木村さんのファンなので、僕の作品をぶっ壊して木村さんにコラージュしてもらいたいって思っていて映像作品集でこれまで2回やってもらったんです。

石川もう1個のパーカーの方では、これもなかなか本来ハードルが高いことですよね。

中村作品の単純化ですもんね。いろんなところ抜いてるっていう。

石川ご提案するにも、失礼なんじゃないかなっていう思いがあって、あんまりやらないものなんです。

中村これもばっちりですよ。だってグラニフのデザイナーさんはこの前お会いしましたけどみんなオシャレだから。その上で僕の作品を理解して下さってる人たちが、作品を抜いたり、足したりとかするわけで、全く心配していないです。それにアパレルになった時はこれぐらい少ない情報量が実は一番いいんですよっていうことだと思うので、これが実現したことで今度僕がまた描き下ろしをするときに、より服に馴染む作品が描けると思うんですよ。

服に馴染むっていう観点で今までやったことがなかったから、ありもの絵を服に落とし込むみたいな、やっぱりそれも限界を感じていて。だから、今回の刺繍されたものにも納得だし、めちゃくちゃ良いと思います。

石川どっちのパーカーもモッズコートに合うんですよね。どっちを重ね着しても良いので迷ってしまいますね。

アイテム 14

紙と布の違いに気付いた「コーチジャケット」

石川シナスタジアのコーチジャケットもまた重ね着がかっこよくなるアイテムかなと思ってます。これもボタン開けたら総柄があるし、ポケットの中にも何か入れたいなっていう遊び心を提案させていただきましたね。デザイン決まってからも、ポケットから出ている部分の調整を何回かさせていただきました。

中村総柄部分もオレンジと赤が同じに見えるとか、色味を出すのが大変でした。何とかクリアできましたね。

石川どっちの色を強く出すかみたいな問題は、毎回ぶつかりますね。

中村でもやっぱり僕の頭ん中では、紙に印刷した想定で色も作っちゃってたんだなっていうのが分かりました。当時は紙に印刷したり、絵の具塗ったりだからそれでいいんですけど、やっぱり布にプリントしたり、人が着用して初めて完成するみたいなものの場合に原画通りにバチって合わせてしまうと、違和感があるし、浮くんですよね。すごい紙脳になってましたよ。

石川僕も元々は洋服畑の人間じゃないから、広告だったり紙や画面で見るみたいなものばかりに携わってきました。描いて頂いたアートやイラストは、その通りの色で画面に表示されるし、印刷されるって思ったんですけど、布になった途端「色数」っていうワードが出てきて面白いなって。

中村なんか特色使いにくかったり、ボディー色が結構影響しちゃたりとか、布はどうしても染み込むので、そういう制限もありますよね。

アイテム 15〜16

「プリントTシャツ」の公開サンプルチェック

石川普通はこういうインタビューの場って、全部完成した状態で改めて振り返るものなんですけど、この場で監修していただきたいアイテムを持ってきました!まさにその色数問題があるプリントTシャツ「JPOP」です。これはまだプロトタイプなので、この後直しますよっていう状態のものではあります。シルクスクリーンで今10色を使っていて、この下に付いている番号は重ね順なんですけど、もうちょっとこの赤を金赤にして、パープルを暗くして、ブルーをシアンにして全体的な調整を取ろうと思っています。他に気になるところありますか?

中村難しいのか分からないですけど黒を抜いちゃって、一色減らしてなじませちゃった方が絶対良くなると思います。

石川なるほど。ありがとうございます。どこまでできるか生産チームと確認しますね。こちらのプリントTシャツ「グラニフ」はいかがですか?

中村ピンクは赤をもうちょっと濃くできますか?

石川はい。そしてカーキはもうちょっと暗くしようとします。

中村うん、いいと思います!ありがとうございます。

石川そして背面です。

中村これ、これも描いたやつだ!

石川全部中村さんが描いたやつです。(笑)

Tシャツの裏表やポケットの内外でストーリーがあるのが、グラニフらしさのところでもあったりするのですが、最近ちょっと悩んでるのは、Tシャツをボトムスにインして着られる方がすごく増えてきているので、裾の方にプリントを入れてしまうとそれが見えなくなってしまうんですね。高齢化の進むグラニフの商品開発チームはインをする人たちの気持ちを考えなきゃいけないね、っていう反省会をしています。

中村それは単なる流行なので、僕としては服はそんな3年とか5年で捨てるものじゃないからいいかなと思いつつ、僕もそれ痛感してます(笑)

石川着ている人だけがわかってるっていう楽しみ方も良いとは思っているんですけどね。

中村いや…やっぱ違いますよ!もう出せっていう。最先端はインじゃなくてアウトだ!って、また時代変わったぞ!っていう、グラニフが流行を引っ張っているというメッセージですよ、これは!…違うか(笑)

アイテム 17

発想の転換で再現されるレース

石川プリントTシャツでは今回「サイレン」も作りましたが、すごくかわいいTシャツになりましたよね。このプリント手法も僕はあまりやったことがなかったんですよ。個人的に面白かったのは、この作品は小さな点点が多いのですが、それをTシャツで再現するために、実際の作品よりもちょっと穴が大きい状態でプリントして、さらに黒を重ねることによって穴(白い部分)を小さくしていくっていうプリント手法を取りました。

中村黒が二重になってるってことですよね。

石川そうです。シルクスクリーンで色を重ねてプリントするというのを逆手にとって、インクが滲んでしまうという難点を、1回大きな穴、その後小さな穴にでキュッとするみたいな発想を生産チームから提案してもらって面白いなと思いました。原画のこの細かいレースのところがどうやって再現されているのか、知った上で注目して見てもらいたいですね。

中村白インクを引いた訳じゃなくて、下地を活かしてこの細かい白穴が出てるってことですもんね。

石川実はちょっとテクニックが入っていることを分かっていただけたら嬉しいですね。

アイテム 18〜20

多様なアレンジのハンカチシリーズ

石川ハンカチシリーズが第2弾から人気ですよね。

中村人気ですね。

石川毎回アレンジしているデザイナーも楽しんでやっている感があります。今回も「お月見うさぎ」では原画にはあった自動販売機など消させていただいてるんですよ。

中村自動販売機が周りのフレームに来てるんですよね。

石川9月発売のアイテムにちょうど良いモチーフですよね。

中村そっか、9月に出るから秋っぽいやつなんだ。いまさら気づきました(笑)

石川(笑)色も落ち着いてて使いやすいんじゃないかと思います。ハンカチとして使っていただいても、お弁当を包んでいただいても良いですね。あとは先ほどの「翼」シャツと似たデザインのハンカチもありますね。

中村こっちの方が背景色が原画のままですよね。

石川アイテムによってその作品の背景の捉え方が違うのも面白いですよね。今回話しきれてない部分もいっぱいあるので、そういった意味での間違い探しみたいに楽しんでもらいたいですね。さらには念願の浅田飴さんのハンカチもありますね。

中村結構何パターンもデザイン案作ってもらいましたね。めっちゃかわいい!

石川作りましたね。今回2分割、4分割の考え方ではないハンカチも作りたいというお話で総柄にしてみたんですよね。

中村浅田飴さんも割とSNSは自由に使っていて、グラニフでアイテムが出るときは関係ないのに拡散して下さったりしてたので、ようやく浅田飴さんに恩が返せるなと。実は浅田飴さんの中の人も、こういうの好きなんですよ。だから多分すごい喜んでくださってると思います。

アイテム 21

甘くなり過ぎない大人のパーカーワンピース

石川ウィメンズのパーカー「誕生日」。淡くかわいらしいデザインになりました。

中村これもアレンジしていただいたんですよね。これ色もかわいい。ポケットの中が夜になってるんですよね!

石川かわいらしくなりすぎないけど、かわいいらしさを見せたいっていう悩ましいバランスを取っています。金プリントも効いてますよね。

中村町の部分もよくこんな細かく再現されていますね。信じられないぐらい細かいですよね。

石川デザイナーからデザイン案をもらうときに、中村さんにお見せする前にちゃんと再現できるかは確認するようにしています。細かい部分が潰れてしまうと、中村さんの作品の魅力がアレンジという範囲ではなく再現できていないということになってしまうので。

中村甘くなり過ぎず大人っぽいパーカーワンピースですね。

アイテム 22

鈍色を再現したグラデーションスカート

石川今回スカートも作らせていただいてますけど、これも綺麗なスカートになりましたね!

中村ワンピースはあったけど、スカートは初めてですよね。こっちは逆にめちゃくちゃシックですよね。広がらないと絵が見えないようになっていて、こういう手法、僕はすごくいいなと思いました。

石川このグラデーションがかなり綺麗にできましたね。

中村めっちゃ綺麗だと思います。実はこれも、背景の色のグラデーションは木村豊さんに作ってもらってたんですよ。「鈍色の季節」っていうタイトルだったから、どういう色だろうと思っていたら提案を受けて。だから今回、木村さんの作品が二つ入ってるみたいなものです。

石川そうだったんですね!

アイテム 23

あの作品に影響を受けた
中華街スタイル「シャツ」

石川まだご紹介していないのが「中華街スタイル」シャツですね。これはスタンドカラーになっています。

中村このちっちゃいポケットに何を入れるんだろう。でもコードの刺繍がちょろっと出ているのがいいですね。ぱっと見て気づけないところだけど、絶対こっちの方がかわいいですもん。こういうのを気づいてくれる人を大切にしていきたいな。

石川背面の作品もとてもかっこいいですね!

中村これを描いたときドラゴンボールの神龍をイメージしていて、鳥山明さんが太い線で描くドラゴンってめちゃくちゃかっこいいよなと思って。

石川僕ら世代はドラゴンボールなしには語れないぐらい影響を受けてますよね。

中村あとは、枠から飛び出してる表現も鳥山明さんがよくコミックの扉絵とかでやっていたんです。グラニフコラボのドラゴンボールも最高でした。

アイテム 24

腕時計と合わせたい「トートバッグ」

石川今回「フェイス」トートバッグは、商品写真だとなかなか気付き難い部分だと思うのですが、このプリント、黒いラインが厚盛りプリントでぷくってしているのが良いですよね。腕時計と一緒に合わせて持っていただきたいですね。

中村グラニフのデザイナーさんはバランス感覚がすごいですね。

石川ありがとうございます。これを読んで喜んでいると思います。

アイテム 25

みんなで作った夢のコーディネート

石川2wayトートバッグは肩掛けできるので、ぜひ明石さんのワンピースと一緒にコーディネートしてもらいたいです。

中村キャラクターデザインのはラベンダー色で、アニメの中ではカーキ色だったけど、アンケートだったら希望は半々でした。結局、ユニセックスで考えると、できるだけ持ちやすいカーキ色の方に合わせたという感じですね。

石川バックとしては容量大きくて使いやすいですよね。パソコンやスケッチブックなど持ち歩く人に最適です。

中村明石さんは何でもかんでも入れてましたからね。

石川我々の勝手な理想なんですけど、このワンピースとトートバッグ、どちらかでもいいんですけど、実際に着用しているところを見たいですよね。

中村見たい!

石川「#グラニフ明石さん」と付けてSNSに投稿して頂いたら僕らは見に行きたいですね!

中村うん。でもこれよくヨーロッパ企画さんもOK出してくれましたね。

石川中村さんの匂わせ投稿にヨーロッパ企画の上田さんが反応されてましたよね!

中村僕としては絵の中の遊びとして、上田誠さんが原案だから、明石さんが映画撮ってるのはヨーロッパ企画という設定にした方が面白いよなと思ってやったのです。でも実際のヨーロッパ企画のロゴなわけじゃないですかこれって。実際にある劇団の。

石川正直、なんと言って確認取ろうかなと思ったんですけど、このヨーロッパ企画さんのマークがあるかないかだと大きく変わってきますからね。快くOKいただけて良かったです。

中村明石さんのワンピースのポケットにも「もちぐま」1匹いて、トートバッグの中に4匹いるんですよ。だから二つで全員揃うみたいな感じになってますね。あ、これ見せたいですね。このワンピースボタンの色とかもかわいいんですよ!

石川ここまでグラフィックが入っていない洋服をグラニフで作るのは初めてに近いかも知れないですよ。

中村要は全体をグラフィックと捉えて絵を起こしてるわけですもんね。まさか僕も最初は遊びというか、石川さんにじゃれつく気持ちで、無理かなと思ったけど言ってみたら、でき上がってきてしまってるみたいな。

グラニフさんとコラボしてるけどあんまりこういう型のワンピースを出してるイメージないし、元々ある型に当てはめるだけだったら、値段をもっと上げて他のところで出して欲しいってリクエストがあったと言ったら、もうグラニフさん「そんなことないもん!」ってムキになって型から作り出したのかなって想像してました(笑)いやでも、この値段の中で収めるっていうのがすごい。信じられないです。

石川もうこれこそ頑張りました(笑)

中村いや、これは頑張りすぎですよ!グラニフさんこれで利益出るの?って心配になるクオリティです。

石川今回は今までのコラボレーションと、やり方が変わったという話をしましたが、それこそ新しい作り方になりましたね。先に企画が世の中に出ていて、追いつく形でアイテムが出るっていう。

中村普通の会社だったら、めちゃくちゃ怒られてると思います。(笑)

でもそれがきちんと形になっていくところが面白い。結局、コラボと言っても、ただ単に素材を渡してるだけみたいなコラボって、僕は消費者としてもファンとしも寂しい。きちんと最後まで一緒に物を作ってほしいのに、そのキャラクターがプリントされてるだけのものを出すとか、作者さんがあんまり告知してなかったりとか、そういうのを見ると、それぞれのやり方はあるとは思うんですけど、「あれ、納得しない商品が出ちゃってんのかな」とどちらのファンも不安になるじゃないですか。

それの最上級が一緒に物を作ってますというのを最初から全部見せるっていう。本当に一緒にやってんだっていう、ちゃんと血が通ってるというか、全員の血が合流して、最終的にアイテムとして出ていくみたいな。

僕はそういうことが好きで、守秘義務の必要性ももちろんあるんですけど、そうじゃない場所や時も絶対あるはずで、見せてあげた方がいいとか、これだけSNSが発達しているんだから。

だから全員で一緒に作っていくという、そういうのが1個ぐらいあった方がいいなって思う中で、たまたま今回この明石さんのワンピースが作れたってのはすごい幸運だなと思います。

好きなグラフィックを着用するということ

中村グラニフさんがなぜ服を作ってるのかっていうのは、世の中にない価値観を提案するっていうことじゃないですか。だから他のコラボレーション見ても、やっぱり独自のコラボレーションを毎回するから、ファンは多分「グラニフでコラボ」って聞いたら楽しみだと思うんですよね、みんな。

石川その期待に応えていかなきゃいけないっていうプレッシャーはあります。僕自身はグラニフに務める前は、それこそ無地だったりとか、ストライプとかボーダーの洋服しか着ていなかったんですよ。それこそサブカルチャーというか、イラストとか映画とか漫画が好きなオタクではあったんですけど、その嗜好を洋服に結び付けてなかったんですね。

中村フロントやバックにロゴやデザインがあるだけで凝ったデザインのものがあまり世の中になかったですしね。

石川グラニフに入って自社のものを着るようになって、やっぱりこうやってお話させていただきながら作ったものにも愛着もありますし、着るようになって思うのは、多分今僕が普段着ているものって、まるっと5年前、入社する前に戻ったときに、いきなり着れるかって言ったら、ちょっと派手すぎて着れないってなると思うんです。でも、自分が好きなグラフィックの服を着用しはじめると、どんどんその良さがわかって、どんどん派手になっていくんです。(笑)

中村ド派手になっていくんですね。(笑)

石川例えば、男性がいきなりピンクとか、着づらいなって思う方とかも、まずは好きなアートが入ってるものから試してみて、この絵が入ってるならこの色じゃないなっていう好みがだんだん自分の中でできあがって少しずつ色も取り入れていくことで、好きな服を着てテンション上がるっていう気持ちを、今回これを読んでくださってる方、中村さんの作品が好きな方だったり、興味がある方に試してもらえたら嬉しいですね。

直筆サインのプレゼント企画が
開催決定!

石川インタビューが終わった後にお話しようと思ったんですけど、今回すごくかわいいポスターになったじゃないですか!僕も家に飾りたいなって思ったので、例えばあのポスターに10枚ほどサインを頂いてプレゼント企画とかしてもいいですか?

中村いいですね! 10枚でも30枚でも、50枚以内だったらいいですよ。(笑)

石川ありがとうございます。では、2023年8月23日(水)から2023年9月4日(月)の予約期間中に予約してくださった方の中から抽選で50名様に、今回の描き下ろし作品ポスター(A1サイズ)に中村さんのサイン入りでプレゼント!という企画を実施します。

石川あ、このあと、第4弾の話もちょっとさせていただけたらなと思います。

中村はい、ありがとうございました。

石川ありがとうございました。

Profile

中村 佑介

1978年生まれ、兵庫県出身のイラストレーター大阪芸術大学デザイン学科卒業。ASIAN KUNG-FU GENERATION、さだまさしのCDジャケットをはじめ、『謎解きはディナーのあとで』、『夜は短し歩けよ乙女』、音楽の教科書など数多くの書籍カバーを手掛ける。画集『Blue』と『NOW』は13万部を記録中。

株式会社グラニフ
プロダクトディビジョン | ライセンスセクション | マネージャー
石川 祐

グラニフのコラボレーション責任者。コラボ商品の企画立案から商品リリースまでを総合プロデュース。作家や作品に寄り添い、一人のファンとして、商品開発に取り組んでいる。趣味はエンタメ全般、他人の趣味の話を聞くこと。

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