2024.10.16

不定期連載「コラボの原産地」第15回です。
コラボレーション商品を紹介することを口実に、
作家さんやアーティストさんと制作秘話を対談する企画です。

今回のインタビューはグラニフではお馴染みとなった大人気イラストレーター中村佑介さんです。
そして後半ではASIAN KUNG-FU GENERATION(以下アジカン)の後藤正文さんとの初の鼎談(ていだん)も叶いました。
ジャケットアートなどアジカンのために描かれたイラストを使用したアイテムを一緒にご紹介します。

今回もインタビュアーを務めるのは、グラニフコラボレーション担当の石川です。
作品ゆかりの地 京都で贅沢な環境の中、中村さんと1日中がっつりお話ししました。
今回のラインナップのご紹介、製作秘話、お客さまのアンケートについてなど盛りだくさんな内容となっています。
後半では、まさか後藤さんにまでお会いできるなんて!!

プレゼントやキャンペーン企画もご用意していますので、ぜひ最後までご覧ください。

1部:コラボレーション第4弾!これまでの評判は?

石川それでは第4弾のインタビューを始めさせていただきます。

本日のインタビューは3部構成で、1部は中村さんがメインビジュアルとキャラクター原案を描かれた『四畳半タイムマシンブルース』(以下『四畳半』)の聖地、「源湯(みなもとゆ)」さんからお送りします。よろしくお願いします。

中村さん(以下、敬称略) よろしくお願いします。ここは『四畳半』に出てくる銭湯オアシスのモデルですね。

石川これまで3回のコラボレーション、そして『サマーウォーズ』『君の名は。』『ストレンジャー・シングス』と手掛けていただいた中で、反響はいかがでしたか?

中村ありがたいことに街でもネットでもご反響たくさん頂いております。

第1弾からやらせてもらっている間にグラニフさんがTシャツ以外のものもたくさん手掛けるようになったので、どんどん作りたいものが出てきてしまいますね。

1回のコレクションで出せる種類にはどうしても制約があるので、15なら15アイテムになるまでいろいろと案を削って出しています。予算やスケジュールといった制約があるのでいつも本当に悩みますね。

石川悩みます。お店の中で1回に展開できる枚数の決まりもあり、その中でどうやってコレクション全体を表現しようかという、個々のアイテムデザインと全体バランスの兼ね合い、まさに「木」と「森」の両方の面で難しさも毎回感じます。

中村「出したいもの」と「出してほしいだろうもの」のバランスも難しいです。

石川さきほど源湯の方にお話を聞いたら、やっぱり明石さんのワンピースや中村さんの作品のTシャツを着て来てくださる方が多いとおっしゃっていて、全身で作品の世界を楽しんでいただけていると思いました。そうやってある種の聖地巡礼をするための「正装」として使っていただいているのは、ありがたい限りです。

中村ありがたいです。そんな時に作ってよかったと感じます。

新作アイテムは全21種類

石川第4弾の今回のコレクションは20種類、少し前にリリースされる「イカク」の企画アイテムもあわせると21種類です。まずはアジカンさんのイラスト以外のアイテムをご紹介します。せっかく源湯さんに来ているので、まずは『四畳半』のデザインにしましょうか。

■明石さんパーカーとハット

石川明石さんがドンとフロントに入っている、ウィメンズのポンチョパーカーです。ジャージのような素材でとても触り心地と着心地の良いアイテムになっています。明石さんの襟のラインがステッチ刺繍でぐるりと後ろまで伸びています。

中村イラスト全体は使っていないのですが、『四畳半神話大系 Blu-ray BOX』の絵から一部をデザイン化したものです。

石川明石さんを抜き出して使わせていただきました。フードは基本的に、被るというより垂らしていただくデザインです。

中村フードの絵も刺繍になってるんですよね。

石川この猫ラーメンのところは結構、紆余曲折ありましたね。

中村刺繍になったら絵が潰れてしまうので、どこまで単純化させたら猫がいるように見えるか? というのと、アニメーションの意味あいを考えて「これは必ず入れたいから、こっちを省いてこれ入れましょう」みたいなことをずっとやってましたね。何回もテストを出して。

石川最初は店主もちゃんといたんですよね。

中村いましたが、ここまで小さくなると店主がいることで屋台に見えなくなってしまうので、残念だけど取らせてもらいましたね。猫をワンサイズ大きくしたり。

石川のれんの切り込みも省略したり、細かい調整を経てこの刺繍ができあがっています。簡略化でだいぶ猫とわかるようになりました。このアイテムはここが1番苦労したと思います。

中村いや、刺繍でここまで、すごいです。

石川続いては明石さんのリバーシブルハットです。

中村これは、中が総柄のパターンになっているんですよね。内側の柄というだけでなく、リバーシブルで使えて。

石川はい。片面はネイビー地に明石さんのワンポイント刺繍、くるっとひっくり返していただくともう片面は総柄パターンで、リバーシブルになっています。2WAYでお使いいただけます!

中村これも刺繍を作るとき、最終的に明石さんの主線を消しました。このあと出てくるアジカンの絵柄でもそういうアイテムがあって、「こっちもたぶん主線消した方がいい」となって、最終的にそうしました。

石川これだけでなく次にご紹介するソックスもですが、今回の商品開発では中村さんに「明石さんを明石さんたらしめるところはどこなのか?」を教えていただきました。

中村僕の絵はかなり単純化されているので「どの線が大切な線か」というのは結局僕しかわからないんですよね。

石川「ほくろは絶対必要だとして、向こう側に見える髪の毛も必要だよね」といったキャラクターデザインのことは、我々もとても勉強になりました。

■ソックス「明石さんパターン」
「夜は短し歩けよ乙女」

石川そういった議論が一番活発に進んだのがソックスでしたね。完成形はすごくきれいにできました。

中村ソックスは今回2種類ありますが、本当に大変でした。何回やり直すんだっていうぐらい。

誰も気づかないかもしれませんが、この2点は描き下ろしなんです。刺繍なら先ほどのような細かい調整でぎりぎり出せるんですが、ソックスの編み込みで絵を表現するのはファミコンのドット絵と同じぐらい大変なんです。だからソックス用に描き直しました。

石川ソックスは独特で、編み込んだ逆V字の積み重ねでできているので「このVを1個削らなきゃ」みたいなシーンが何回かありましたね。

中村だから僕の方でまず、2枚ともドット絵に落とし込んでもわかるものを描き下ろして、でもそれをソックスにしたら全然絵に見えなくなってしまって。それならこれは描かないといけないですね、とドット化したものをさらに僕の方で修正していきました。

石川パッと見は気付きにくいかもしれないですが、明確にビフォーアフターで差があります。

中村ありますね。最初のドットを直していった一部がこれです。こういうのとか、ドット用に描き下ろしたのがこれで。

石川そうですね、『四畳半』の「もちぐま」の目とか。

中村そうですね。このもちぐまの目はだいぶ修正前のものですが、最終版は「四角にしてもたぶん丸に見えるから」っていってね。僕、昔はゲーム会社に行きたかったので、小学生のときから自分が好きな『ビックリマン』『ドラゴンボール』『キン肉マン』とかをグラフ用紙に描き直すっていう練習をずっとしてたんです。

石川わ、すごい!

中村昔はファミコンやゲームボーイしかなかったのでゲームのグラフィックといえばドット絵だ、とグラフ用紙で練習していて。結局ゲームメーカーには進まなかったんですが、今回そこでの経験が活かせるなんて、よかったなと思いました。とっても楽しかったです。

石川ソックスは独特な修正が必要なアイテムでしたね。そういうディスカッションを重ねさせていただけたから、いいものができたととても感じます。

中村納得するものができました。

平面上では実現できても刺繍では無理です、となって『夜は短し歩けよ乙女』の柄もはじめはこんなふうじゃなかったですよね。最初はランダムに乙女とリンゴが並んでいるドット柄のようなものでした。

石川絵型(洋服の形を図で表したもの)の時点ではそうでしたね。

中村それを僕の方で、上からどんどんリンゴが積もっていってその中の1つが乙女になっているものに一度変えてもらって、それもそのままの絵ではできなくてさらに単純化したり。

『夜は短し歩けよ乙女』の文庫版を持っている人は比べてみてほしいんですが、イラストから省いた要素がたくさんあるし、線の太さも違うんです。明石さんと同じで「どこを残せばこの作品になるのか、どこまで削れるのか?」というのがたぶん僕しかわからないので、同じ絵だけどグラニフ側でやらずに僕が描き直してるというのは、そういう部分です。

石川中村さんに簡略化していただいて、グラニフ側でソックス用のデータに直して、サンプルを作ってというキャッチボールを何回もやらせていただきました。

中村1ドット右にずらしてください、みたいなことをを何回もやって、また工場に出してみて、また直してもらって。

石川細かい部分は一度工場に出してみないとわからないんですよね。その1回1回のラリーが数週間空くのですが、チェックと修正の繰り返しで、だんだん良くなっていきました。

中村それだけじゃなくて、いくら理想があってもドットや刺繍がモチーフ同士でまたがってしまうこともありましたね。機械のエラーみたいなもので、ときどき眉毛が繋がっちゃったみたいになってしまって。それなら1ドット離せば出なくなるかな、と機械のクセとの兼ね合いみたいなことをしましたね。

規制がある中でどうやってそれを生かして作るか? と考えるのがとても好きなんですよね。だからどんどん規制を課してほしいです(笑)。

石川今回のアイテムの中で1番規制がありましたね。でも、こんなにちゃんと中村さんの作品だとわかって、編み込みで再現できるというのは、たぶん世の中で他にないレベルだと思います。

中村他のメーカーではここまでさせてくれないと思います(笑)メーカー主導でグラフィック的なものを使った商品はたくさんありますが基本的に監修するぐらいで、元の権利者が何もできないスケジュール感がほとんどです。その結果、ファンの方たちは「なんか違うな?」と感じてしまうものができてしまう。ファンの方たちは作る側の事情なんてわからないし、関われないですから。

だからこれは、グラニフだから作れたと思います。

石川正真正銘、中村さんが監修されたコラボレーションから生み出されたソックスですからね。僕たちでも第1弾のときだったらできなかったと思います。中村さんとの関係性が密になったからこそ生まれたアイテムだと思います。

中村そう。あの段階ではできなかったと思います。そういう作りにくいものは再販や再生産も難しいんですよね?

石川いつか復刻できるかというとお約束できるものではないので、ぜひこの機会にお手に取っていただきたいと思います。僕も思い入れがありますし、ぜひゲットしていただきたいアイテムです。

■Tシャツ「My name is」「走れメロス」

石川次はTシャツをご紹介します。まずは「My name is」です。

中村これも、気に入っています。

石川ボディカラーも含めてすごく雰囲気がいいです。これは『きらら』という書店で配布されていた文芸誌の2014年10月号で中村さんが表紙絵を描かれていたものですよね。

中村元はそうですが、これも今回用に表情や文字や細かいところを描き直しました。今日は変えた部分がわかるものも持ってきましたよ。

石川ここに「My name is」と足したんですよね。

中村はい。グラニフ用にアレンジにして、表情ももっと大きな声を出している口や鼻に描き換えています。だから厳密には違う絵になっていますね。あとは色をTシャツ用に少し減らしています。

石川商品のデザイン紹介文を書くスタッフがいるんですが、このネズミを見て「えぇっ!」って驚いていました。「石川さんだ」って。

中村本当だ!

これは違うんですよ、たまたまです(笑)。石川さんと出会う前に描いてましたからね。

石川そう、「違う違う」って言って(笑)。

中村文学や原稿用紙がテーマの絵です。ソックスを作る段階で「絵の中で履いている原稿用紙柄のソックスは作れないですか?」とご提案したんですが、今回ソックスは2種類と決まっていてできなかったんです。

それならどこかで原稿用紙の感じを出せないかな? と思って、背面プリントのところで原稿用紙の番号欄のデザインを取り入れました。これはデザイナーさんではなく、僕が全部やらせてもらいましたね。

石川原稿用紙になれるTシャツですね。

中村この絵を使ったTシャツはこれ以上のものは作れないと思います。トートバッグとかになってもかわいいと思いますね。

石川次は『新釈 走れメロス 他四篇』の表紙イラストのTシャツです。

中村これも大変でした。「あ、メロスだ」と思うかもしれませんが、これも元の絵から3、4色ぐらい色を減らしていて、実は全部塗り直しました。インクジェットプリントでもきれいですが、やっぱりシルク印刷で作った方が絶対きれいなので。そうなると色数は制約せざるを得ない。だからそのために「どの色なら削ってもこの絵が保てるのか?」というのを本当に1日中やっていましたね。

石川着心地もまたちょっと違いますよね。以前どこかのインタビューでメロスの絵は中村さんのお気に入りの1つとおっしゃっていたのでそろそろ出そうと社内で提案しましたが、正解でしたね!

中村はい!この絵も原稿用紙の服を着ているので「My name is」とあわせて原稿用紙シリーズです。

石川シリーズ揃えてもかわいいですし、生地の色で選んでも楽しいですね。要素もてんこ盛りで細かいところをいろいろ見て話したくなる作品です。

中村これで森見登美彦さんの表紙絵アイテムは全部出たことになりますね。

■ロングスリーブTシャツ「心の弓」

石川次はスリーブプリントを入れたロングスリーブTシャツです。時期的にも長袖が増えてくるタイミングです。もしかしたらパッと見、知っている作品だと思われるかもしれませんがこれも結構手が入っていますよね。

中村描き直してますね。まず、そのままプリントすると線が細すぎるので少し太くしています。袖の絵はただ拡大してもこうはならないので、今回のために僕の方で絵を大きいサイズにして、描き直してから袖につけています。だからポーズは一緒ですが、厳密には違う絵ですね。

石川そこは本当にみなさんにアピールしておきたいところです。見たことあるからと気づいていただけないかもしれないので。

中村そういうのが今回は本当にいっぱいあるんですよね。基本的に描き下ろしているけど再現度が高すぎて気づいてもらえないものが(笑)

石川細かいところだと、後ろにリンゴがあるんですがリンゴの色味も違うんですよね。写真で伝わるでしょうか。

中村伝わらないかも。一緒に見えちゃうと思いますね。

石川このリンゴの色味の深さが違ったり、黒の「黒さ」を出すところに結構こだわりましたね。

中村こだわりましたね。普通にプリントするだけだと線の黒に赤みが出てしまっていたので、何回かやり直させてもらいました。黒はいろんな色を混ぜて印刷したりするので、おそらく線が細すぎると赤みがボヤ~っと周りに滲んで見えてしまっていたんですよね。だから線を一段階太くしてそれを解消しました。

石川線を太くしたら黒が引き締まるというのはやってみて、なるほどという感じでしたね。

中村別に刷る色は変えてないのに、みたいなことでしたね。

石川あと、デザインの段階ではプリントの四角版の枠を感じてしまうものでしたね。四角で刷っているように見せないために雲を描き足していただいたり、弓を長くしていただくといった調整も入っています。

中村描き足しましたね。ただ最近はTシャツプリントの四角版でドンと刷ったようなものが流行りだしたから、最初のでよかったかもしれない、と作り終えて思いました(笑)あれはどうして流行りだしたんでしょう?

石川流行り出したというよりコスト的な問題だと思うのですが、個人の方がご自身で作ったものをセルフプリントしやすい時代になったのもあると思います。

中村なるほど、セルフやネットプリントでも刷れるようになったから。そういうのは以前はできなかったですからね。そういう流れもあるんですね!

石川なので、作り方を知っている方が増えて角版っぽく感じさせないというのはひと手間が加わっているんだな、ということも伝わりやすい時代になったかと思います。

中村実際の絵と富士山や鶴の大きさの比率も違うんですよ。本やカレンダーで元の絵を持ってる人はちょっと比べてみてもらうと、一緒に見えるけど実は違うというのがわかると思います。

石川富士山の色も違いますよね。

■ウィメンズロングスウェット
「キャンディガールズ ピーチ」

石川次は株式会社浅田飴さんの「浅田飴糖衣」コラボ缶のイラストを使った、ちょっと長めのウィメンズのスウェットです。

中村これはワンピースにもなります。 見たことない大きさの刺繍ですね。

石川一応スウェットワンピースで、少し大きめで長めのスウェットという感じです。刺繍はほぼ鍋敷きぐらいの大きさがありますね。最初に上がってきたときは少し色味が足りないなどもありましたが、きれいな刺繍にできました。

中村鍋を上に置ける(笑)。浅田飴さんのイラストでもこれは特に人気があって、リクエストもいただいていました。

石川気づいていただきたい部分ですが、ヘッドホンの線の先がポケットに向かっていてメディアプレーヤーがあるというデザインになっています。ここの画面の文字まで線で表しているんですが、最初の刺繍はどうしても糸が渡ってしまい文字に見えなかったので、文字に見えるように調整したのが実はとても細かい努力ポイントです。

中村ポケットの中に入っていっているのがまた、かわいいですよね。前のゲントウキの『誕生日』のジャケットイラストのパーカーとシリーズみたいな感じです。あのときのようなフードはついてないけど、かわりにポケットがついてるような。

石川女の子が着るとだいぶゆったり目のサイズ感です。

中村部屋着でも外着でもかわいいですね。

石川部屋でも着ていただきたいし、ワンマイルというかちょっとコンビニやスーパーに買い物行くときに着たり、1枚で長くくしゅっとした靴下を合わせたり、ショートパンツとあわせたりしてほしいですね。

■スウェットとマフラー「グラニフ」

石川次はこちらのスウェットで、今日僕も着てきました。前回のときにグラニフの「好きを形に」というテーマで描いていただいたグラフィックをカレッジ風のデザインにしたいよねとお話して作ったのですが、すごくいいですよね。

中村これもものすごく気に入ってます。ようやくこの絵が収まったような。

石川胸の文字は刺繍で、腕には信号機があって。

中村生地と印刷の白の差みたいなものがたくさん詰まっています。

石川生地はオフっぽい感じの白のベースで。白の種類がたくさんあるのがいいですよね。

中村虎のところは白のインクがついてて、刺繍の白も違う白。「白の中でどれだけ幅が出せて色が作れるか?」みたいなことがこの絵の特徴です。

石川白は200色あるといいますし、サンプルが出るたびに白の差が成長してクオリティが上がっていく感じがありましたよね。

中村テンション上がりました!

石川前回もお話しましたが、小さくたくさんグラニフ要素があるんですよね。

中村はい、隠れてます。マンホールや電柱、後ろの看板とかに。

石川実際に見て探してもらいたいですね。実際にこんなに大きなグラニフのビルはございませんが(笑)。

中村それから、普段の僕のコラボ商品は“GRANIPH”ロゴは入れないのですが、グラニフさんのテーマで描いたのでこれには入れたいと思って「この書体でこういう風に入れてください」と僕から頼んでやってもらいました。

とにかく気に入っていて僕も早く着たいです。今日、石川さんが着てきた気持ちがすごくよくわかります。

石川次は前回好評だった黒いステンレスボトルの絵柄も使ったリバーシブルマフラーです。

中村これがもう、第3弾の発売前にすでに作り始めてたんですよね。

石川商品開発に時間がかかる、というのもあって早めの進行でしたね。

中村そう。一番最初にいただいた提案では、裏表でこんなデザインじゃなかったんですよね。確か白の側に白の動物も黒の動物もいて、裏は真っ黒、みたいなのだったのを「リバーシブルでもやれますか?」って。表が白で絵はあって、裏は一見絵がないように見えるんだけど実は黒の動物たちがいる、というふうにしてギリギリ見えるように何回も何回もテストして。見えすぎてもいけないし、見えなさすぎても気付かれないから、という調節をしましたね。

石川生地の状態から何度もやりましたね。

中村このタイプのマフラーはあまり裏返して使う感じのものはないんですが、これはきちんとリバーシブルとして使えます。黒面にしたらそこまで絵が目立たないから、目立たせたくない人にもいいし、見せたい人は白面にしたら目立つようになるしとちゃんと2wayで使えます。

しかもこれは、インナーダウンウェアブランドの「TAION」さんとのコラボにもなってるじゃないですか。僕、もともとTAIONさんの商品をよく買ってたので、とてもうれしかったです。軽くて本当にあったかいんですよ。びっくりすると思います。

石川持ち運びもしやすいです。機能的な話をすると、たたんで中に入れられるのでさっと巻けてさっとしまえます。

中村ご飯食べに行ったときとか、コンパクトに四角になるのでカバンの中にしまえますよね。

石川マフラーや手袋は失くしやすいので、とても便利です。

■Tシャツ「イカク」アニバーサリーコラボレーション

石川以上のアイテムが今回、アジカンさんのもの以外でリリースさせていただくコレクションになっています。それから、このコレクションよりも前にすでにリリースされているんですが…

中村10月の初旬ぐらいに。

石川はい。初めての試みで、グラニフのオリジナルキャラクター「イカク」を中村さんに描いていただきました。レッサーパンダのこの子、普段は威嚇(いかく)をしているんですが、今回は休ませてくださったんですよね。

中村そう、「イカク」はあまりに普段から威嚇し続けてて疲れてるだろうから、今回休んでもらおうと思って。かわりに人間が威嚇をしてあげているっていう絵を描かせて頂きました。

それで威嚇しているものって他に何かあるかな? と思って調べたら、ウニや栗のトゲなども他の生物に対する威嚇なんですよね。だから秋ということで栗のトゲにして「IKAKUri(イカクリ)」です。

また、「イカク」のコラボでありながら後ろに栗があるデザインで浅田飴のパロディでもあるんです。

石川そうですね。

中村実は今回「浅田飴の桃みたいな感じのオリジナルイラストでアパレル展開しませんか? 」とご提案いただいていたのですが、今まで話したような描き下ろし作業が思ったよりたくさんあって、新しく描き下ろす時間がなかったんです。

それで、時間はないけどやりたいと伝えたら「じゃあイカクのイベントにあわせたアイテムならどうですか?」ということになって。

石川はい。しかもこっちの方が先に出ました。シングルカットのような感じです。

中村Tシャツは割と早く作れるっていうのもあって。これも第4弾のコラボコレクションの1つでもあり、結局2つのコレクションの共同体みたいになりましたね。

ぜひ先ほどの浅田飴の桃のパーカーと一緒に揃えてほしいです。あの桃のイラストのパロディになっています。

石川そうですね。

ところで、中村さんの中でグラニフは自社ビルが大きいイメージがあるんですか(笑)?

中村そういうことではないんですが、オフィスをそのまま描いてもわからないので(笑)

石川毎回大きなビルにしていただいてるってことなんですね。こうならなきゃいけないなって我々は引き締まります(笑)。

中村ゆくゆくはなるはずですよ、グラニフ大ビル、グラニフ不動産(笑)。

それで後ろもグラニフのマークのパロディになっていて、イカクくんが「a」の上で寝てるっていう。

石川かわいいですよね。graniphの「i」の部分を女の子が担っていて。グラニフのスタッフたちも、すごく喜んで着てくれそうな感じがします。

中村これもばっちりかわいくできましたし、お店の方たちもグラニフのキャラクターだったらより着やすいですよね。いずれ全部のキャラクターを描いていきたいです。

石川ほんとですか。定期的に出していきましょう!

中村実は「コントロールベア」の15周年記念のときにも言われてたんですよね。そのときは時間があわなくて描けなかったんですが、ラフはずっと考えていたので「コントロールベア」や「ビューティフルシャドー」も描きたいし、「オーサムタイガー」も絶対描きたい。僕、グラニフの消費者としては「オーサムタイガー」のものばかり買ってるんです。

石川リモートで中村さんとお話するときに、画面の後ろに「オーサムタイガー」のトートがかかっているんですよね。僕がお送りしているわけじゃなく、知らない間に増えていて。ありがたい限りです。

1部のインタビューの最後にお話するんですが、Xのリクエスト企画のところでも「ローリングパンダズともちぐまのコラボが見たい」というご意見がありました。

中村ありましたね。そういうコラボも実現したらおもしろいですね。

ここまでのアイテムの中で、中村さんのお気に入りは?

石川中村さんとの第4弾はこういったラインナップになっています。今回はアジカンさんとのコラボアイテムもありますので、それはこのあと場所を移してお話しようと思います。

一旦ここまでで中村さんのお気に入りをあげるとしたら、どれでしょうか?

中村男女兼用で使えて僕も着れる中でお気に入りを選ぶとなると、ソックスとカレッジ風トレーナー、Tシャツは原稿用紙Tシャツ、それとマフラー。もちろん全部お気に入りですが、女性向けのものが結構あるので、女性の方には他もいろいろ気にいっていただけると思います。

特にマフラーとソックスはダントツです。初めてのアイテムということもありますし、次出せるときがあれば別の柄で出したいなと思うぐらい自分の絵がしっくりきています。作業も楽しかったですしね。

石川発売したアイテムを見て、第1弾を経て第2弾、第2弾を経て第3弾と中村さんとやらせていただいた歴史があってはじめて成立したと毎回思います。僕らのコミュニケーションがレベルアップしたから、世に出るものも少しずつレベルアップしているという楽しさを、毎回かなり実感できています。

中村石川さんとDiscord(ディスコード/トークアプリ)で繋がっていて、当日「いま時間空いてます?」とお互いが提案したり修正を出せるという環境じゃないと、第4弾とはいえここまでのものは作れないですよね。たぶんもっと既製品的になるというか作家やファンの方たちの意思を汲めていないものになってしまうと思います。

時間的に忙しい方だとチェックに1ヶ月かかるなんてこともよくありますし、版権チェックのあるものだったらなおさら。そうなるとどうしても、たとえグラニフさんがやりたくても時間が足りなくなって、締め切りがきてしまい無難なものしかできなくなっていきます。でも本来ファンはそれを望んではいないですよね。

石川このスピードでコミュニケーションが取れるというのは、正直なところ普通じゃないと思いますね(苦笑)。「ぽんちゃん(中村さんの愛犬)の散歩から帰ったらディスコードつなぎます!」というやりとりが僕らのコミュニケーションの中では普通じゃないですか。僕も、ちょっとすいません今打ち合わせが終わったのでこの後いいですか? とか。すごいスピード感です。

中村普通じゃないですよね(笑)。僕、こんなに仕事を楽しんでいいのかな? と毎回思ってます。

やっぱりそういう関係じゃないとお互い言えないこともたくさんあるし、「今回は出せなかったけどなぜこれがボツになるか」という事情を教えていただいたら、その中で考えたりこちら側の都合を伝えたり、そういうこともできます。

石川中村さんのレスポンスが早いおかげで、僕もこちらから言いたいことがほぼ全部言えているんです。1週間でお返事が来るなら「なぜそれができないか、どういうところにコストがかかるのか」までお話しできますが、お返事が1ヶ月かかるやりとりだと細かくご説明してたら次に進めなくなってしまうので、スパッとできないという話になってしまうと思います。

「こういう理由でできないから、ここを変えるなら成立できそうです」と代替案までご提案できるのは、レスポンス早くディスカッションできることと、中村さんがそこを知りたいと思ってくださるからですね。本当の意味でのコラボレーションができてるな、という実感があります。

中村僕もそういうことはとても知りたいので。「一緒に作る」ってたぶん、そういうことだと思うんですよね。ただ絵だけ渡してデザインしてもらって、適当にOK出してそこそこ売れてみたいなのって、やっぱり仕事としても全然おもしろくない。ファンの方も飽きてくるというか。

グラニフではどこまでがデザイナーさんで石川さんで僕で、というのがないんですよね。みんながそれぞれ担いあって話しあって作っているので、コラボでこういうことができるんだと驚きです。

他のところでやっていたらきっとすごくお互いに距離があるし、毎回違う担当者が出てきて誰が担当者かもわからなかったりする。問い合わせしても「聞いてみます」で1週間待ったり。そのうちに締め切りが来てしまって作りたかったものも作れなくなってしょうがなく出す感じだろうな、とこの20年仕事してきて、諦めていたところがありました。

それで僕はアパレルはもうやらなくなっていて、最初にグラニフさんから提案が来たときも断ってたんです。そういうやり方だろうと思ってたから。ファストファッションって作り方も流れ作業で、値段を安くするにはそうせざるを得ないのかもしれないけど、自分が関わりたいことではないなって。

でも、グラニフさんと1番最初に『サマーウォーズ』のコラボをさせてもらったとき全く違ったんです。「こんな前から作業してるの?」みたいなところから始まって。だから次のコラボがあるとしたら、実はもう今、作業してますよね。

石川そうですよね。だから、今どうしているかは言えません(笑)。

中村だいぶ前から取り掛かるので、今回の第4弾も、第3弾のときにもう進めてましたよね。

石川ソックスのやり取りなんて本当にこのスピード感でないと、1年かけても生まれなかったと思います。だからある意味、「ここまでの中村さんのソックスを出せるのはグラニフだけ!」って、漫画のキャッチコピーみたいなものがつけられると思っています。

中村そうですね。僕のソックスはどこでも作れるかもしれないけど、グラニフさん以外のところでここまでのグラフィックの編み込みのものを出せるとは思えないし、クオリティの低いものでチェックが来たら「これだったら今回は出さないでください」と言って終わってしまうと思います。

だから、グラニフさんとの今までのコミュニケーションや石川さんとの距離感がないと。これはもう絶対に無理だし、この値段でアパレルの商業で、これが実現できることにびっくりしてます。見たことないですよ、こんなの。

石川これはぜひ店頭で見て驚いていただきたいですね。でも確実に手に入れていただくには予約した方がいいアイテムでもあります。

中村そうですね。

石川というわけで、1部はここまでです。ありがとうございました。

次は場所を移して、スペシャルゲストをお呼びした上でお話をしたいと思います。

2部:ASIAN KUNG-FU GENERATION
後藤正文さん登場!

石川2部は場所を移して毎年夏に「四畳半タイムマシンブルース」を上映されている映画館の出町座さんへやってきました。

こちらではASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんをお招きしてインタビューさせていただきます。よろしくお願いします。

後藤さん(以下、敬称略)・中村よろしくお願いします。

石川今回で4回目の中村さんのコレクションになりますが、いつも中村さんとのコラボではアジカンさんにも大変お世話になっております。ご協力ありがとうございます。

後藤こちらこそありがとうございます。

石川先ほどまで、中村さんとアジカンさん以外のデザインの第4弾コレクションをご紹介していました。

ここからはアジカンさんのラインナップをご紹介しつつ、お伺いしたいこともたくさんあるので、中村さんと後藤さんにお伺いしたいと思います。

中村先日リリースされた「Single Collection」の初回生産限定盤のブックレットのときみたいな対談で。

後藤うん、わかりました。

石川中村さんとはこれまで3回コレクションを作らせていただいて、グラニフとしてもアジカンさんの楽曲ジャケットイラストのアイテムにとても反響をいただいています。第1弾からやらせていただいていますが、後藤さんの耳にも反響が届いていたりするものでしょうか?

後藤よく見かけますね。SNSや、ライブに着て来てくれる人もいるし。ときどき街で見かけてドキッとしたりします。

石川そういうときにお声がけをされたりということはないですか?

後藤逆に、なるべく距離を取りますね。僕も街中で見つかりたくはないので、むしろ着ておいてもらえた方がうまく避けられて助かるかもしれません。

石川中村さんも街を歩いていてコラボアイテムを着用されている方は見かけますか?

中村ほぼ外に出ないので街ではわかりませんが、僕のサイン会や講演会といったイベントに着て来てくださる方はたくさんいらっしゃいます。

石川もし歩いているときやぽんちゃんの散歩の途中に見かけたら、声をかけますか?

中村着てくれる人を見るのはうれしいですよ。うれしいですが、こちらからは声はかけないと思います。かけられたら応じますが(笑)

石川じゃあもし着てて「後藤です」「中村です」と声をかけてくる人がいたら、ご本人じゃないのでご注意くださいってことですね。

後藤中村そうですね(笑)

石川なるほど、そういう目印になっていると。ありがとうございます。

後藤あ、でも前1回ね、外国の方が空港で着てるのを見たことあります。仙台空港で。

中村日本に旅行に来てて買って下さったのかな。

後藤隣に座ってたんですが、全然こちらに気づかなくて。だからアジカンや俺のことをそこまで認知してないけどデザインが気に入って着てるのかな? と思って、逆にそれがすごいいいなと思いましたね。すてきなことだなって。

石川もちろんアジカンさんが好きで購入される方が多いのでしょうが、洋服なのでデザインから入られてアジカンさんとわかり、聞いてみようとなる方もいらっしゃると思います。

中村若い世代の方で、服を買って知ってCDも買いましたっていう声は結構いっぱい届きます。それで聞いてみようと思ったって。

後藤わ、うれしい。ありがたいですね。

石川そうやって広がりが増えていくのは、とてもうれしいことですね。

ご自身のバンドの楽曲ジャケットとして描かれたイラストが洋服になる感覚というのはどういうものでしょうか? 僕らが中村さんにお願いして作って完成品を見るのとは、またちょっと違う印象を持たれると思いますが。

中村ツアーグッズでも昔からときどきはジャケットを使ったTシャツは作ってたけど、ここまで色数を使ってやるのはコストが大変で、ライブグッズではなかなかできないんですよね。

後藤すてきだし、いいことだと思います。ひとつ不思議なのは、例えばローリング・ストーンズのTシャツって昔から着てるけど「あれ描いたの誰だろう?」とはあまり思ったことなかった。でも中村くんのは「誰の絵だろう?」と思うことですね。

中村イラストレーターやデザイナーが今までは気にならなかったけど、気になるってことだね。

後藤そう。さっきの「イラストから音楽を知ってくれる人もいる」って話のように、別にアジカンのジャケットだって知らなくてもそういう出会いがあるし。

僕もこういう仕事をしてなくてこれを見たら、普通にいいなと思う。今回のやつも俺が作った曲のジャケットじゃなければ着れるのにって悔しさがあるよね。めっちゃええやんって思うけど俺は着れない、みたいな。

中村「ゴッチ」や「中村佑介」って書いてるようなものだから、自分で着るのは僕も躊躇します(笑)だから僕も今日、ゆかりのある場所に来るのに何を着ようかな? と迷って、いいなと着てみようと思ったのが「ワールド ワールド ワールド」の第1弾のときのシャツなんだけど。

石川総柄の半袖シャツですね。

中村実は初めて自分で袖を通してみたんだけど、やはりそういう意味でキツいというか「中村佑介が中村佑介をアピールしてる」って感じになっちゃって(笑)。

後藤でも、1個だけ着れる方法あるんだ、海外ツアーのときなら違和感なく着られる。

中村あ、そうだね。それは大丈夫だ!

後藤海外なら、そういう変な自意識との絡まりがないから普通にかわいいでしょって着れるけど、日本だとちょっとやっぱり痛いやつだと思う。

石川ご本人たちにはそういう苦労があるんですね。

後藤本人は着れないですよね。だからカート・コバーンだって自分のTシャツ着ないじゃん。そういう何か…恐ろしさというか。でもミック・ジャガーは着てるかな?

中村ライブの時は着るだろうけど、普段は着ないんじゃない。どれだけバレたいの?ってなってしまうから(笑)

後藤それはそうか。でもミック・ジャガーは着るんじゃないかって気もするけどね(笑)。

石川僕らはそういう発想にならないじゃないですか。僕はグラニフの人間ですがグラニフ着てても大丈夫なので、お二人ならではのご意見だなと思いました。

中村僕は「自分はこういう絵を描いてます」って結構近所の人に言ってしまっているからこそ、着れないのもありますね。それこそ「自分のやつ自分で着てる!」ってなるから(笑)。

石川見て!みたいな主張を感じてしまいますね(笑)。

中村それ以上に、僕のことをその人たちに知ってほしいみたいな変な圧がかかるじゃないですか。それで「すいません、買ってないんです…」みたいなことになりたくありませんし(笑)近所の人は僕の仕事と関係ないのに。「昨日歩いてたけどなんか挨拶しにくくて避けちゃったよ~」って隠れちゃったとか言われそう(笑)

後藤確かに。夕飯の話題とかでね(笑)。

(一同笑)

石川せっかくお2人が揃っていらっしゃるのでお伺いしたいんですが、普段楽曲ジャケットを中村さんが描かれる流れというのは、どうされていますか? 完成した音源を後藤さんが中村さんにお渡しして始まるんでしょうか。

中村音源と歌詞は送られてくるけど、最初から基本的に何もオーダーないですよね。それで僕が聞いたらようやくゴッチが「それだったら説明するけど」って、昔はそんな感じでしたね。

最近はアルバムだと説明が必要とわかってきたので、ゴッチが前もって「今回のはこういうコンセプトで…」と教えてくれます。ただそれもビジュアルをこうしてほしいとかじゃなく、あくまでアルバムのコンセプトや作ってるときのテンション感みたいなものを教えてくれるだけで「こういうモチーフを入れてほしい」とかっていうことはメンバーやマネージャーさん、レコード会社に至るまで、今まで本当に誰からも一切言われたことがなかったですね。

後藤ないね。あるとしたら「ファンクラブ」と「ワールド ワールド ワールド」のときに「ファンクラブ」はモノクロに近い感じで、「ワールド ワールド ワールド」みたいに好きに作るのはもう少し色鮮やかな感じになるかも、みたいな話はしましたね。でもそれも音楽の話としてしてるだけで。

中村そうそう。

石川中村さんから後藤さんに聞いてコンセプトを伺ったところで汲み取って、アートワークにされているんですね。

中村そうですね。でもたぶんゴッチは1番最初の「崩壊アンプリファー」や「未来の破片」を描いているとき…24、5歳ごろかな?

後藤か26、7歳だよね。

中村そのころから、僕がどうしていいかわからなくてメールで何を描いたらいいか聞いたら「いや、僕らの音楽を聞いてもらって、受け取ったことを描いてほしいだけで、こういうのを描いてほしいっていうことじゃないんだよ」みたいなことを言ってくれて。それでああ、そうなんだと思ってきましたね。

僕もイラストレーターをやり始めだったから「出版社の本の表紙ならこういう形で依頼があってある程度ラフが送られてきて」みたいなのを経験していたんだけど、あ、そうじゃないんだなと思って。そこからもうずっとその感じですね、不思議です。

石川それで実際に中村さんが音源を聞いて描かれたアートワークを見て、毎回後藤さんのほうで「イメージ通りだな」とか「こう来たか」みたいな、リアクションはどういう感じなんでしょうか? ある程度イメージされているんですか?

後藤めっちゃいいじゃん、って毎回思ってますね。イメージは全くしてなくて、「あ、こうなるんだ」という驚きというか。今回のはこういうタッチでいくんだ、とか、僕たちのモードを聴き取ってかわからないけどちょっとタッチが変わったなとか、色使いが変わったなと思うのはありますね。批評的に見てるというより、普通に1人のファンとして楽しく見て喜んでる感じです。

石川後藤さんから修正がくることもないんでしょうか?

中村ないよね。修正はレコード会社から「実は商品的にこういうものを描いてはいけなくて」みたいなレギュレーションに関してだけ今まで1、2回あったぐらいで、本当になんともないんですよ。

後藤うん、何か不満に思ったことはないですね。これを描き足してほしいとか思ったこともたぶんないし。

中村何かあったら次に描けばいいしね。ずっと描くっていうのが決まってるから。

後藤確かにね。

石川本当に、共鳴して作られているんですね。

中村たぶんなんですが、彼らが曲作ってライブで何回か試して、レコーディングしてマスタリングして完パケ(全て完成)してるころには、もう次のことを考えてますよね。だからいつもアルバムができた後のインタビューは時差あります。あれどうやったっけ?みたいな。

後藤うん、確かに。

石川完成してから中村さんが描いている間があって、発売した頃にはもう次に進んでいるんですね。

後藤そうですね。音源が完成したタイミングで中村くんに出すとすごい大変になっちゃうと思うので、新曲はなるべく早めに送ってます。

中村そう。早い段階でね。

後藤次はこういう感じで、リリースもこんなイメージで、実際の時期はどうなるかわかんないけど次の曲はこれだと思ってるんだよね、みたいにしています。もしかしたら俺、そういうシェアはバンドメンバーよりちゃんと説明してるかもしれないです、中村くんには。

中村「ダイアローグ」は大変だったよね。とても早くやってたけど結局どういうリリース形態かわからないままコロナ禍になってしまって。

後藤うん。

中村あれは不思議だった。コロナ禍の前に曲送ってもらって聴かせてもらってたら途中でコロナ禍になって、時期がどんどんずれていったのに、コロナの時期のことを歌ってるのかな? という感じに聞こえて、逆に今出したら不謹慎みたいになっちゃわないかって。全然違ったのにね。

後藤確かに。「触れたい 確かめたい」もね。

石川そうだよね。だからレコード会社としてもタイミングを見てたみたいなのがあって。

中村貴重なお話ですね。発売までの時間が長くなると、そういう時流にあとから変にマッチしてしまうことがあるのですね。

後藤そうそう。その間にやっぱりこれはジャケットをあわせてフィジカルにしたいとか。

中村(完全生産限定盤で)Tシャツつけたりしよう、とかね。

後藤うん、つけたいって言って。俺がちゃんと「しっかりものにしたいよね」っていうのがあると、「ダイアローグ / 触れたい 確かめたい」はやっぱりすごくジャケットも印象的でよくて。

中村いま改めて考えても、コロナが流行ったときは仕事もいっぱい飛んだし、どうなるか終わりが見えなくて大変だったけど、あのときにそうやってイベントとか仕事が一度全部吹っ飛んで、それでそこから描くみたいなことも僕にとってはよかった。その後がすごく調子がいい。1回あそこで切れちゃってるっていうか。

後藤あ、ほんとに。

中村うん、すごくリラックスしてるというか。だってまたコロナのときみたいになるかもしれないと思って。それだったらもっとフットワーク軽くやってもいいのかなと思ったね、あのときは。

後藤なるほどね、確かにそうだね。

石川モチーフなどを含めて、中村さんが汲み取って毎回入れているのでしょうか?

中村そうですね。

後藤本当にイラストの話はしないです。色の話すらしないですね。音楽の話はしますね。例えばビートルズだったらこの時期のこれ、みたいな話はするけど、

中村うん。

石川たまにジャケットにメンバーの方が描かれているものもありますが、あれも中村さんの遊び心で入れられているんですか? メンバーの似顔絵や「ダイアローグ / 触れたい 確かめたい」の中で船に乗ってたりしたような。

中村そうですね。毎回似顔絵でもいいんですが、メンバーは別に描かなくていいと最初から言っていたし、僕らの似顔絵を描くわけじゃなくて作品のジャケットを描いてほしいっていうから、たぶんアジカンの作りたいものはグッズではなく作品なんだろうと。だから、僕の作風で人をこうやって描いているけど、もしかすると人間もいなくてもいいし、本来は色だけでも風景だけでもいいかもしれないですよね。

後藤うん。

中村ただ、ファンの方からするとやっぱりときどき「モードチェンジした彼らの姿」は見たいじゃないですか。CDの中を見てもメンバーの写真はないし、公式サイトや雑誌にアーティスト写真があるぐらいで。だからCDで追いかけてくれている方のために「最近この人たちこんな感じになってますよ」と日記みたいな感じで、ときどき小さめに入れてたりします。

石川中村さんが代わりに近況報告してるんですね。写真と言えば、この間リリースされた「Single Collection」の中で、中村さんも含めてみなさんで写っていらっしゃいましたね。

中村対談中に結構たくさん撮ってたから、いっぱい載るのかな? と思ってたら最後しかなくて、あ、こうくるんだと思った。今までのアルバムで写真を使ってたのはあった?ライブ盤やブルーレイは別で。

後藤ないね、あれは初めてだよね。

石川ですよね、だからもう「写真載ってる!」と思ってドキッとしました。

後藤確かにいままで写真は一切載せてこなかったので、「Single Collection」で初めてでしたね。

石川あれはものすごくレアなことだったんですね。読んでて楽しかったです。

中村レアですね。あの収録もほんと楽しかった。

後藤おもしろかったよね。

石川お二人はすごく長く一緒にやられていらっしゃいますが、やり取りの方法は最初と変わってきましたか?

中村もともとそこまでやり取りしてないですよね。アルバムのコンセプトを聞いて、その中でわからない言葉があったら「これはどういう意味で使ってるの?」みたいに2、3往復するだけで。ラフ描いて出すのはレコード会社の人に送るだけなので。

後藤そうだね。

中村発売してからゴッチからときどき感想があるから、ありがとうって。あとはときどきこうやってイベントで会って話すとかなんですよね、会っても仕事の話はほぼしたことがない。前も対談のあと喋ったけど、最近何の本読んでるの? とか普通に友達同士の会話をしてるだけで。

後藤一緒に山口から帰ってきた時は長いこと話し込んだりしたよね。

中村そうだね。でも、すぐ寝るんだよな~(笑)。なんか「喋りかけんな」みたいな雰囲気でおにぎり食べてビール飲んで目瞑って。隣の席なのに。

後藤あれは、だから疲れてたから(笑)。

中村(爆笑)うん、そうだね。

石川お二人のご関係は最初に出会ったときからこういう雰囲気ですか? 気を遣いすぎず、みたいな感じですね。

後藤気は遣ってないですね。楽しく話して。作品に対してのリスペクトはあるけど。

中村会ったときはだってね。世代が同じですから。

後藤くだらない話をしたりね。二段ベッドからお兄ちゃんが落ちてきたんだっけ?

中村そう、兄ちゃんが天板を突き破って落ちてきてとかね。

後藤そういう公であまり言えないようなおもしろい話がいっぱいあるので、そういうの聞いてゲラゲラって笑って。繊細な絵とのギャップというか、繊細な人だとは思うけど豪快な話がたっぷりあるから、よくわからんなぁと(笑)。

中村これだけの付き合いなのにまだわかってもらえない!(笑)

後藤友達として興味深い人だなと思って帰るって感じですね。

石川てっきりクリエイター同士の繊細なやり取りが…みたいな話になるのかと思ったら(笑)。

中村自分たちの表現の話はここ(できあがったもの)で完結しないといけないことだから、これをズルズル言っててもしょうがなくて。そのとき必死にやってるだけだもんね。できることはやってるからそういう話はしなくて、最近これが気になってるとか、他の人や社会現象に対してはどう? みたいな話をしたりするね。

後藤そうだね。

中村特にゴッチは、日記は書いてるけどX(旧Twitter)をやらなくなったから、リアルタイムであんまりそういうのを知る機会があまりない。それで話をして「だから今回歌詞こんな感じだったんだ」とか「じゃあ次こういうの入れた方がいいかな」と思います。でもそれも、まあそうなんだ、ぐらいだね。

後藤そうだね、お互いこういう風に考えるんだ、みたいなね。やってることや権利の話1つとっても、ミュージシャンとイラストレーターは視点が違ったりするので。

中村いつかXで「喧嘩しないでください」みたいに言われたことがあったよね。こうやって話をしているだけで、喧嘩はしてないんだけどなぁって思ったけど。

後藤してないよね、全然。

中村うん、でもそう見えちゃうのかもね。普段何話してるか知らないから。

後藤案外、お互いの意見が違ったりすることもあるからね。でもまあなるほどね、みたいな感じで終わる。お互い「そう思ってるんだ」みたいなことだから、揉め事は一切なくて。立場が違うのは当たり前だからね。

中村うん、不思議だよね。

石川ファンすぎる意見で申し訳ないのですが、お二人がクリエイティブについてお話をされているのを見聞きしていると、本当にちょっとかっこよすぎますね。もともとずっとかっこいいと思っていましたが「基本的に出たものでお二人の表現自体はもう完成しているから、それについては話さない」みたいなところも含めて、改めてかっこいいので、今すごくドキドキしています。

後藤いやいや。

中村とんでもないです(笑)。

石川では、ここからはコレクションについてご紹介しつつ、中村さんと一緒にこだわった部分をご説明させていただければと思います。

後藤はい、お願いします。

■スウェットとセーター「崩壊アンプリファー」「君繋ファイブエム」

石川まず「繋がる」のハーフジップのスウェットです。「崩壊アンプリファー」と「君繋ファイブエム」のジャケットイラストを繋げさせていただくのは、過去のコレクションでも何回かやらせていただきました。

中村マグカップとトートバッグですね。

石川まだ洋服にはしていなかったので、今回スウェットにさせていただきました。女の子たちだけ刺繍になっているデザインです。背景はプリントで、女の子が刺繍になっています。

中村刺繍で絵が描けるんだよ。

後藤すごいね。でもハーフジップって、今も昔もおじいしか着てなかった形のイメージが…?

中村いや、それ僕もそう思ってたんだけど違って、そう感じるのは僕らが歳だから。僕もこういうの持ってるから提案がきたとき「大丈夫ですか?」って聞いたら「若者の間でハーフジップはすごく流行ってて」っていう。

後藤へ〜!

石川韓国カルチャーから始まっている流行かもしれませんが、若い子は全然違和感なく着ているそうです。逆に僕たち40代になるとおじいさんのイメージがというのはありますね。

中村そう、信じられない。だって僕シャツインすら抵抗あってできないからね、80年代とかの昔はおじいがゴルフでシャツインして上までズボン上がってるイメージで。

後藤俺、ときどきシャツインはするんだけどふと「おじいの側だ」って(笑)。一回「NANA-IRO ELECTRIC TOUR」のときにシャツインで出たら笑われたんだけど「今は別に普通におしゃれだよ!」って言って(笑)。

中村いやそうなんだよね、あの時代を1回通ってるから。

後藤だから俺はインはわかるんだけど、ハーフジップは知らなかった。でもそうなんだね。刺繍もすごいな。

石川何回もやり直して修正しながらここの部分をきれいにとか、女の子の洋服が再現が難しいところでした。

後藤白地もかっこいいね。

中村そう。これも白のTシャツになってもいいよね。でも今回は秋冬コレクションなので。

後藤なるほど。

中村このスウェットはそのままのイラストを再現しているんだけど、こっちのセーターの絵柄は少し違う。

石川構図の発想としては同じなんですけれども、こちらは編んでいます。

後藤かっこいい。

石川実はこれは同じ素材(絵)を使っていないんですよね。中村さんにニットにするならと相談させていただきました。

中村そう、これも描いたんです。まずニットにするときに絵の上が足りないのとニットの編み込みのドットが結構大きいので、元絵の細かさは潰れてしまうから一旦全部描き直して。潰れてしまうモチーフは省いていって、というのをセーター用にやりました。

石川サンプルを作っては、あごのドットが足りないねとか、糸の色に「もうちょっと赤が入ってた方がいいよね」と話をしました。

中村そう、ひっくり返して見てみて。ジャケットの時と顔も違うし眉毛と前髪も違うんだよ。

後藤ほんとだ、なるほど。おでこのところもちょっと違う。だから少し柄も整理してってことなんだね。

石川一度描いていただいて編んでみて、編んだものを見て今度はドットの方を修正をして、という流れでやっていただきました。

後藤ちゃんと和ものっぽい感じがするのもいいところだよね。なんだか和柄な感じがします。

中村そうだね、風呂敷みたいな感じかな。そういう柄は別に入れていないんだけれど。

後藤何かはわからないけどJAPANな感じがするね。でも昔からそう思ってたな、(中村さんの絵を)初めて見たときから日本っぽさというか。

石川はい。海外の方に見ていただいてもそういう印象があると思います。

後藤日本のカルチャーとしてちゃんと伝わるというか。なんて言うんだろう、アニメとの親和性もあるけどちゃんとアートの側に落ちてるように見えるのもいいところ。

中村そう見えるんだね。これはよくできたと思う。

後藤かっこいいよね。俺だってアジカンのメンバーじゃなかったら着るよ。だって俺がこれを近所で着てたらちょっと痛いやつになっちゃうから(笑)。

中村ばれたいのかばれたくないのかどっち? って混乱させちゃう。後藤さんですかって言っていいのか迷うよ。知られたいと思いだしたのかな、寂しいのかなって(笑)。

後藤後藤さんですよね? って売れてないんかな、みたいになるよね(笑)。

■トラックジャケットとパンツ「ソルファ」

石川続いて、今回も「ソルファ」のイラストでいろいろ作らせていただきました。今僕も着ているのがこのトラックジャケットなんですが、金の部分と鳥だけ刺繍になっています。

後藤へえ、すごい。

中村それでジャージのポケットは右にハトがいて、左から虎のしっぽが出てるんだ。そして、袖のラインをギターのフレットにしたんだよ。というのも、絵の女の子が着けてるアームカバーがこういうふうになってるから。

石川ラインのところはこだわりましたね。

後藤決してギャンブルが好きでサイコロみたいにデザインしたわけではないと(笑)。

中村違う違う、『カイジ(賭博黙示録カイジ)』の“地下チンチロリン”柄ではない(笑)。

石川上下で着ていただけるようにトラックパンツもご用意しました。

中村下は女の子の顔の刺繍が入ってて、これも描き直してます。普通に切り抜いたものじゃなくてちゃんと描き直したやつ。後ろには鳥も入ってる。

後藤ああ、ほんとだ。

石川上下共にラインはあんまり目立たせすぎないようにしようと、これも中村さんと色に関して結構やり取りしましたね。

中村そうですね。グレーにしてほぼ見えないようにしてくださいって。いかに主張できつつ普段着にもできるかというのは、こういう絵がついてる洋服の永遠の課題というか、とても難しいですね。ファンの方からしたらもっと絵がバーンと欲しい人もいれば、着やすい方がいいっていう人もいるから。本当にバランスが難しいですね。

石川ファンの方のご意見を募集しても、この背中ぐらい大きくイラストが入ってるものが欲しいという方も、ワンポイントぐらい小さい方がいい方というもいらっしゃって。

後藤ヤンキーは大きい方が好きそうだけど、でもメンタリティによるよね。

中村Tシャツの柄にしても、前がいい人と後ろがいい人と半々ですからね。

石川これは、上下セットで販売するわけではないのでそれぞれパンツだけ、ジャケットだけでもと選んでいただけます。

後藤片方だけでもいいんだね。

石川お好みに合わせてご着用ください。

■キャップとトートバッグ「ソルファ」

石川トラックパンツ用にせっかく描いていただいたので、キャップも刺繍で作らせていただきました。

中村主線を抜いたやつですよね。

石川一回サンプル作ったときは主線を入れていたんですが、黒いラインの外枠線を入れない方が帽子としてかわいよねっていうことで、入れずに。

後藤なるほど、へぇ。

中村これも大変でしたね。主張しすぎないように線を抜いて最終的に作ったんですよね。で、これは刺繍では再現できないというモチーフはどんどん元の絵から削っていって。思ったより刺繍とか編み込みみたいなものは、そのまま描いたらいいわけじゃないし、色数も変えてる。

石川そうですね、刺繍糸の色数の都合もありますし。中村さんはそういう製法のところにも興味を持ってくださって、ジャージの生地に刺繍するのと、キャップの生地に刺繍するのでは刺繍工場がまた違うので多少の差がありますとお伝えしながら作っています。

中村興味ありますしおもしろいですね。でも「これをもうちょっとどうにかいい色にできませんか?細かくできませんか?」と言っていたら、結局最後は気合いだみたいになって(笑)。がんばってもらいますっていう、それだけでなぜか直りましたね。

後藤えぇ、そうなんだ。

石川そうでしたね。

石川刺繍の2WAYトートバッグも作りました。これはアウトラインのみで、線画の刺繍です。そんなに主張しすぎずという。

中村うん、これは前回パーカーを出していてそれのトートバッグ版みたいな感じだね。

石川2WAYで肩掛けもできるようになっています。かなり容量が入りますね。ぽんちゃんのお散歩用にも使えます。

後藤お散歩アイテム入れるのに使うんだ。何入れるの?

中村携帯と財布と、お水とお水入れるコップと、トイレセットぐらいだから、お散歩バッグには大きすぎるかな。

石川バッグの内側ポケットには鳩の刺繍が入っています。

中村持ち手の色が違うのもすごくいいですよね。金っぽくなってる。

石川そうですね、全体のイメージがシンプルになりすぎないと思います。サイズ感も含めてとても人気のアイテムなので、人気のアイテムになると思います。

■パーカー「映像作品集17巻」「リライト」

石川次はジャケットイラストをコラージュしたイラストのプリントパーカーです。「映像作品集17巻」のジャケットイラストでしたよね。

中村そうです。デザイナーの木村豊さん(CENTRAL67)が、アジカンの映像作品集のジャケット用にそれまでの楽曲イラストをコラージュしてくださっていて、以前にもパーカーを作りましたね。

石川はい、木村さんにもご連絡させていただいてOKいただきました。プリントのみのパーカーも欲しいというリクエストも多かったので。コラージュということもありとても豪華です。これは割とすぐうまくいって、1刷目から中村さんに色もOKいただけた感じでした。

石川今回、特に中村さんといろいろやり取りさせていただいたのが「リライト」のアイテムです。まずはパーカーです。先ほどのトートバッグのような感じで線画を刺繍で表現しています。本日中村さんにも着ていただいてますね。

中村そう、いま着てるやつ。これは線画の刺繍を色分けしましたね。腕には炎みたいな模様が刺繍で入っているんだ。

石川フロントの女の子が紫の糸でバックの虎を白糸で、腕にも模様が入っています。ステッチ刺繍でさりげないのが特徴です。着ていただきやすいと思います。

■MA-1とTシャツ「リライト」

石川続いては「リライト」のリバーシブルMA-1です。フロントは虎だけワッペンにさせてもらって、バックは全部刺繍になっています。

中村表はもともとの「リライト」の絵を使っているんだけれど、これは本当ににおもしろいよ。刺繍もすごいんだけど中がね。

石川はい、表の刺繍もグラデーションなどが結構大変だったんですが、やはりここでご紹介したいのは中ですね。リバーシブルなのでどちらでも着ていただけます。

後藤へえ、リバーシブルなんだ。

中村「リライト」の女の子たちの組み合う直前を描いたんだよ。

後藤えぇ! かわいいね。

中村ね。すごいでしょ。

石川このジャケットで、「リライト」の二人が絵で組み合う前までを、打合せで決めましたね。

中村そう。お辞儀したり構えたり、組み合うまでのアニメーションではないけれどそういう感じで別の角度から見れるもの。たぶん楽曲のジャケットでは1回出てしまってもうできないから、こういうときに描いてみるのもおもしろいかなと思って。

描き下ろしで描いているポーズが中国武術の前にやる「抱拳礼(ほうけんれい)」という構えで、開いた左手が知識(文)握った右手が体力(武)、あわせて「文武両道」みたいな意味があるんだって。それから、本気で殴り合うわけじゃないというのを約束してる、そういう試合なんだよという構え。

後藤うん、そういうことなんだね。

中村左手で右手の拳をキャッチしていることなど、もっとたくさんの意味があって、この挨拶だけでもとてもすごいことなんだよね。今回これを描くときに改めて調べて、礼儀というのはとても大切だという意味を知って。それで描いておかないといけないと思って、今回描いたんだ。

石川今まで「ジャケットイラストで見切れている部分を描き足してください」とご相談することはあったんですが、意味合いの上での拡張はしたことがなかったので、皆さんが知っているイラストの姿の前は何をしていたのか? という世界観を拡げるのは初めての相談でしたね。

中村初めてでしたね。

石川それから、グラニフの工場的に1番苦労したのは刺繍のグラデーションになっている部分です。

中村ここはすごいですよね。

後藤確かに。

石川靴の模様が入ってないとかそういうのも含めて修正する箇所には緑の修正がついてるんですが、修正を重ねていくうちにグラデーションが少しずつ良くなっていき、最後OKをいただいて完成しました。

リバーシブルなので1枚で雰囲気が違って楽しめます。すごくかっこいいものができましたね。

中村うん、すごくかっこいいね。

後藤リバーシブルはおしゃれだね。

後藤これもリライトの子達なんだね。

石川「Re:リライト」Tシャツで、こちらも描き下ろしていただきました。いつもの中村さんの作品ともまた雰囲気がちょっと違いますね。

中村そうですね。昔だったら描かないタッチですが、最近のアジカンのやりたいことや世界に開けてる感じを考えて少しアニメっぽさがあるものがあってもいいんじゃないかなと。海外の人からはアニメ主題歌のイメージも強いから、たぶん日本のファンより海外のファンの方が日本のサブカルチャー・アニメ文化みたいなものとの親和性があるだろうと。だから僕が描くいつもの絵と少し違います。

ただ、これはもともとのジャケットイメージの耐久力が高いから遊べた感じです。

石川そうですね。なんだか新しいなと思いました。

後藤何かカンフームービー作りたいぐらいだね、この2人の主人公で。アニメ作ったら絶対いいと思う。おもしろくなりそう、キャラデザやってもらってさ。

中村いいね、誰が作るのかな? キャラデザの仕事はいつかまたやりたい。

後藤他の脇役もいっぱい出したいから、キャラデザ大変だよ、これ。

石川実現したらおもしろいものができそうですね。

後藤さんが語る「未来への投資」

石川第4弾はこんな感じのアイテムを作らせていただきました。肌寒くなってくると使い勝手がいいラインナップです。

後藤急に秋冬が来るからね。

中村これを撮っている今はまだ気温も34度とかだからね。

ところで、ゴッチは最近新しい活動やクラファンを始めたらしいけど、何をやってるの?

後藤立ち上げたのは「APPLE VINEGAR -Music Support-」といって、クラファンは音楽家支援が目的で、滞在型の音楽スタジオをつくるもの。

中村クラファンの返礼品は?

石川中村さんが何か作ったりすることも?

後藤返礼品はグッズとかだけど中村くんは忙しいから、クラファンの期限が早くて大変だよね。企画でいつかミニアルバム作ったらジャケット描いてもらってそれを使うのが1番いいんじゃないか、って話はしましたね。

中村うん、ぜひ協力させて欲しい!これはお茶の倉庫を使ってスタジオを作るんだよね。地元の人も使いやすくて宿泊施設にもなるっていうのを、クラファンで自分も投資して、地元の人にも協力してもらって町おこしじゃないけど、そういうことをやろうとしてるんだね。

後藤静岡県藤枝市にある、もともとは明治時代からのお茶の倉庫で、ライブや宿泊もできる場所になる予定。僕からも結構…まあ投資だよね。

中村未来への投資だね。

後藤そう、だから僕としてのリターンは皆がいい作品作ってくれたらそれが何よりの喜び。中村くんが静岡を描いてくれたら楽しみだなっていうのは、あるんだけどね。

中村富士山は一度きちんと描いてみたいなぁ。

後藤そうだね。でも、五十三次の宿場町だから「東海道五十三次」をがっつりモチーフにしたようなのを53枚描いてほしい(笑)

中村あ、なるほど。でも53枚はちょっと(笑)。

後藤いや、でも五十三次を全部作ったら…。

中村毎年1枚描くとしたら53年で描けるからギリ行けるかもしれない。いやちょっと待って、いま46歳だから53年後だと…

後藤99歳、妖怪化してるかも(笑)。99歳なんて前後も何にもわからんようになってるって(笑)。

(一同笑)

中村手がプルプル震えながら描いてね。でもそうやって続けばいいよね。別に僕たちを知らなくてもいいから僕らが死んだ後も何かが残って続いていったらいいし、そのためにやるんだよね。

後藤そうだよね。見てみたいし、中村くんの広重みたいな作品が並んだら歴史的な価値も出てくるよね。昔の宿場町じゃなくて、ちゃんと今のもので描いてある。

中村そういうの描きたい。

後藤でもそれは宿場町が関係なくてもおもしろいアイデアだよ。日本のお土産として確立するよね、昔浮世絵がバンバン輸出されたみたいに。

石川浮世絵という話だと、Tシャツで使っているシルクスクリーン印刷もある意味浮世絵と同じような作り方なので、Tシャツとも相性が良さそうですね。

中村そうですね、製法は現代の浮世絵ですね。

後藤実は、シルクスクリーン印刷でバンドマンが自分達でTシャツやグッズを作れる機械をここに置こうと思っているんだけど、それの中村くんの絵のバージョンの版も置いておいて、刷って帰ってもらうとかどうだろう? Tシャツだけじゃなくてトートとか持ち込みでもいいしね。今思いついたけど(笑)

中村それいいね! 自分の好きなものに刷ってね。

後藤やりたいね、そしたらみんなが来る理由になる。アジカンファンも中村くんのファンも観光に来てもらって、記念に刷って帰ってもらうとか。自分がファンだったらすごくうれしいなと思う。

中村すごくいいね、おもしろい。

■中村さんがグラニフ1日店長に!

石川第4弾コレクションの予約開始が10月の中旬で10月末に店頭に並び、最初の週末である11月2日(土)は東京、3日(日)は大阪で中村さんに1日店長を務めていだくことになっています。

後藤おぉ、大丈夫ですか、それ。マイナスにならない?(笑)

中村なんでやねん(笑)。レジ打たないから大丈夫。

後藤店長だけど座ってるだけというか。

中村そうそう、喋ったりお渡し会したり。

石川中村さんのグラニフ用の名刺をお作りしますので、今回のアイテムを購入された方にお渡しいただこうと思っています。

後藤別にうろちょろして服のおすすめしたりそういうこと言うわけじゃないんだね(笑)。

中村そうだよ、営業妨害はしないから。なんで自分の営業妨害せなあかんねん(笑)。

石川楽しみですね。手に入れたコレクションはぜひ街中で着ていただいて、後藤さんや中村さんが近づかない目印にしていただきまして(笑)。

後藤中村そうですね(笑)。

石川というわけで、インタビューは以上になります。本日はありがとうございました!

後藤中村ありがとうございました。

「中村佑介」第4弾コラボレーション
発売記念 プレゼントキャンペーン

2024年10月16日~10月28日の期間中に「中村佑介」第4弾コラボレーション商品を予約購入いただいた方の中から抽選で合計5名様に
中村佑介とASIAN KUNG-FU GENERATION 後藤正文 直筆サイン入りCDをプレゼント!

中村佑介、後藤正文サイン入り
ASIAN KUNG-FU GENERATION『Single Collection』(初回生産限定盤):5名様

※当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
※賞品は2024年11月下旬発送予定です。
※抽選賞品の内容、送付時期は変更になる可能性がございます。
※ご予約商品とは別送となります。

*ケース内部にサインいただきました!

Single Collection / ASIAN KUNG-FU GENERATION
2003年リリースの1stシングル「未来の破⽚」から2023年リリースの30thシングル「宿縁」までの楽曲に加え、「遥か彼⽅」を新たにレコーディング・収録した全33曲のシングルコレクション!昨年メジャーデビュー20周年を迎えたASIAN KUNG-FU GENERATIONの歴史が詰まった作品に!初回⽣産限定盤は豪華仕様となり、これまでのシングルリリースの歴史を辿る、本作でしか⼿に⼊らない貴重な内容となっている。

Profile

中村 佑介

1978年生まれ、兵庫県出身のイラストレーター。大阪芸術大学デザイン学科卒業。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONのCDジャケットをはじめ、『謎解きはディナーのあとで』、『夜は短し歩けよ乙女』、コンバースとのコラボスニーカー、音楽の教科書など数多くのアートワークを手掛ける。画集『Blue』と『NOW』は13万部を記録中。

後藤 正文

1976年静岡県生まれ。ロックバンド・ASIAN KUNG-FU GENERATION(アジカン)のボーカル、ギター、ほとんどの楽曲の作詞作曲を手がける。未来を考える新聞『THE FUTURE TIMES』を2011年に創刊、 レーベル『only in dreams』主宰。著書に『後藤正文の朝からロック』『何度でもオールライトと歌え』ほか。2024年にAPPLE VINEGAR -Music Support-を設立、今年9月にクラファンがスタート。

株式会社グラニフ
ライセンスプロデューサー
石川 祐

グラニフのコラボレーション責任者。コラボ商品の企画立案から商品リリースまでを総合プロデュース。作家や作品に寄り添い、一人のファンとして、商品開発に取り組んでいる。趣味はエンタメ全般、他人の趣味の話を聞くこと。

3部:今後のアイテム展開はどうなる?
Xご感想&リクエスト企画インタビュー

石川今回、1週間ほど中村さんのXアカウントでグラニフとのコレクションにご意見やご感想を募集していただきました。160件以上のたくさんのコメントと引用リツイートをいただき、ありがとうございました。最後に中村さんとアンケート企画についてお話したいと思います。

中村みなさん、プレゼントがもらえるからとりあえず書くとかじゃなく本気で書いてくださって。提案書みたいになっていて本当に読むのが楽しかったです。

石川手描きでイラストをつけてくださる方もいらっしゃったりと、本当に熱量がすごかったですね。全部読ませてもらいました。「着用してます」「ボトルがお気に入りです」という声がすごく多かったです。全部をここでお読みするのは難しいのですが、少し読ませていただくと…

「黒の水筒がとっっってもお気に入りです!先生の動物のイラストがたくさんで使う度楽しくてニコニコになります。娘と取り合いしてる!」なんていう。前回の黒ボトルに黒インクの印刷はおもしろかったですね。

中村今度は、白いボトルで白インクが見えそうで見えないように入っているバージョンを作るのもいいかな、と思いますね。

僕のイラストはほぼ人物が入っているので、欲しいけど衣服だと着用しにくいとおっしゃる年齢層の方もいらっしゃるので、イラストが動物だけのものや洋服以外のアイテムがありがたい、というご意見もたくさんいただきました。

石川「洋服はちょっとハードルが高いですが、雑貨だったら欲しい」というご意見もありましたよね。

中村そう。あと僕がそれでいいんだと思ったのが「半袖で出したアイテムと同じデザインで、長袖も出してほしい」というご意見も何個かいただいて。せっかく気に入ってる半袖の服が秋冬になって長袖の中に着ると完全に見えなくなるから、長袖で同じデザインを出してほしいと。

石川そうですね。

中村「四畳半神話大系のパーカーを出してほしい」というのも、『四畳半』のものはいっぱい出したと思っていたのにパーカー出してないんだと気づいたり。デザインのバリエーションを見たい人も結構いるし、過去に出たものをリバイバルではないけど別の絵で同じデザインを見たい方もいるんだというのが、今回ご意見いただいてよくわかりました。

僕らからすると毎回新しい面を見せたいばかりで考えてしまうけど、半分か3分の1ぐらいは過去の好評だったアイテムで半袖を長袖に変えるだけや、色を変えて再販など、そういうのでもいいんだと思いましたね。

石川そうですね、コラボも第4弾ともなると第1弾は3年ぐらい前です。あのときのTシャツをとても気に入って着てたから使い込んで色褪せてきていて、また欲しいという声も増えてきましたね。

中村そうなんですよ、こういうのは一期一会じゃないですか。販売期間内であまりに早く売り切れたものは再販がかかりますが、基本的に毎回売り切れたら終わりで半年後に再販は無理なので。そういう事情も、もしかしたらきちんと説明した方がいいのかもしれませんね。

石川そうですね。

中村事情がわからない人は本やCDみたいに再販できると思っていて「どうしてあれは再販してくれないんですか?」と聞かれるんですが、アパレルは事情がまた別なんですよね。昔だったらたくさん作ってたくさん売ってみたいなことをバンバンやってたけど、今はそれができなくなっています。メーカー側もなるべく売り切れるような数しか作れなくなっていますよね。

石川数量で実績を見ていくのもありますし、やはりビジネスである以上在庫が残ってしまうのはよろしくないですね。在庫が残り続けると処分しなければいけない場合もありますが、それは作品にとっても環境にとっても良くないですし。

そういうことがあるので、なかなかそのまま再販は難しいんですよね。あと第1弾の「ソルファ」の表裏Tシャツなどは今だと原価の高騰で、あの価格でリリースはできないっていうこともあります。

中村しかも2回目だと結局1回目より出ないんですよね。欲しいと言っている方全員がじゃあ買うかというとそうでもないし。だから今後コレクションをやるなら、毎回シリーズの中で1個はリクエストを聞いて再販枠やリメイク枠を受けるっていうのを作ってもいいかもしれません。そうするとみんなも言いやすいですよね。

石川『君の名は。』『すずめの戸締まり』『ストレンジャー・シングス』などコラボ作品も描いていただいた流れで、「この作品描いてもらいたい」という意見がとても多かったです。

あとは、傘が欲しいというご意見もちらほらありました。

中村やっぱり洋服以外のものですね、傘、スマホのバッテリーやスマホケース、コインケースとか。前に出した水筒や、あとタオルですね、

石川ストールやブランケットといった布小物。

中村手ぬぐいもありましたね。手ぬぐいみたいなデザインの方向だと、金魚のハンカチは1度作りましたよね。

あと、タオルもいいですよね。僕が大阪国際女子マラソンのイラストを描いたときに、完走したらもらえる記念グッズとして僕の絵が入ったバスタオルを3年間展開してもらっていたんですが、毎回いいなと思って見ていました。

石川バスタオルサイズいいですね、僕も欲しいです。それから、バッグインバッグが欲しいというご意見もありました。

中村いやもう、自分のような男性目線だとこの発想は出てこないので助かります。バッグインバッグは男性だとガジェットが好きな人だったらギリギリ持ち歩くぐらいで、ポケットにそのまま入れたり基本的に全部カバンに放り込むだけの人が多い。女性服はポケットがついてないものも多いのでそういう需要があるんですね。

石川持ってる小物が多いというのもありますね。

中村多いですよね、化粧品とか。

石川絵や写真付きのリクエストもいただきました。かなり丁寧に送っていただいたのでイメージが付きやすいです。

中村それから、明石さんのワンピースのときもあったのですが、ひとつのアイテムに真逆の意見がくることがあって、今回もやっぱりありましたね。「白黒が1番着やすいのでTシャツでもっと増やしてください」というのと「中村さんの絵は色がいいから白黒はいらないので色付きを出してください」と。

石川意見をくださる方の中には黄色のトートを愛用していますっていう方もいらっしゃいましたね。

中村ヤギのトートバッグですね。バッグとかなら色がついていてもいいですよね。

例えば、ターナー色彩株式会社さんのアクリルガッシュという絵具のキャラクター「タナ子ちゃん」。僕が9人の子を描いていて、それぞれのカラーのTシャツやトートバッグが欲しいと言われるんですが、これは本当にいかんともし難いんです。受注生産ならできるかもしれませんが、やはり派手カラーや原色を使ったアイテムはベーシックな色のものより売れにくいんですよね。

石川そうですね。

中村僕もプライベートでは同じようなことを思います。どうして紳士服のメーカーに行ったらグレーや黒や紺しかないのかな? と。それで原色のTシャツを扱っているメーカーを探すんですがどんどん減ってきていて。しかも、そこでも秋冬は作らない。

でもそれは客としては理解できるんです。僕が買うようなものって一般的には売れないようなものだと思うので。生産者としての事情と消費者としての欲しいものは僕の中でも乖離しているので、毎回悩みますね。石川さんに提案するときも色つきのものを出してボツになると、どうしてか聞いたらやっぱり「黄色は本当に売れないんです…」みたいな返事がきますよね。

石川はい。

中村そうなると生産数が少なくなって、全体の値段が上がってしまうのでグラニフさんのような企業ではできない。今のところはTシャツなら全部のTシャツで価格を統一しているので、生産数も統一しないといけないんですよね。

石川生産数はミニマムの制限などはありますが、そうですね。

中村1アイテムだけ8,500円ぐらいでもいいなら黄色のアイテム作りますよと言っても、それだと結局は買われないと思うんです。と考えるとできる範囲の中でいい解答を探していかなきゃな、と毎回思っています。

石川そうですね。過去3回のコラボの中で僕らの中でも「この色どうだろう?」と実験的なリリースもさせていただきましたが、やはりベーシックカラーがいいという結果が出てしまいましたよね。

中村結局売れるものというは、僕のコラボがあると知らなくてお店にたまたま来た人やもっと言えば僕の絵を知らない人が店舗で見てどれを選ぶかというときに、たぶん色で選ぶことが多いんですよね。売れるものっていうのはそれがどれだけ伸びたかじゃないですか。だから難しいですよね、本当に。

石川おっしゃる通り、会社として作る側になると「ベーシックカラーの方が安全」となりますが、自分がアパレルのお店に行ったらやっぱり白黒だけではつまらないんですよね。僕も色が入ってるのが欲しいな、と思う側でもあるんです。なのでそこが悩ましいです。

中村でも自分たちはマイノリティだというのもわかっているじゃないですか。それはそうだよね、こんな服の色は30代40代になったら着ないよな、という気持ちもわかります。

だからこそ今回のソックスは作っていてすごくいいなと思いましたね。着ても隠れる場所のものだから、結構自由にできる。もしかしたら今後は下着とかも作っていいのかもしれませんね。

石川やりたいですね。

中村それなら色も冒険できそう。ハンカチやタオルなども。色付きのアイテムはそういうもので出す、でいいかもしれませんね。

石川中村さんの原画展に行かれた方のコメントで、色が入る前の線画のアイテムが欲しいというのもありました。

中村「有名なイラストはもう知ってるから、完成イラストもなくて線画だけでもいい」というのは驚きでしたね。たぶんリクエストくれた方が線画と言っているのは原画展などにあるラフの鉛筆線が何本も重なっているような「下描き」のことです。

例えばアジカンのアルバム『ファンクラブ』のジャケットイラストのTシャツは表が完成イラストですが、この裏を下描きの線画をそのまま白や黒で印刷して服自体がメイキングになっているようなもの、表裏が逆でもいいんですがそういうものは、確かにかっこいいしおもしろいと思いました。

石川それをきれいにプリントできたらいいですね。

中村やりましょう。これは1番ハッとなったとてもいいアイデアです。

石川第1弾~3弾までは、総柄にしたりコラージュさせていただくとか、どちらかというと足し算・掛け算の乗算型デザインが多かったような気がします。でもカラフルな作品だと知られているものから全体的に色を抜いてみたり、色を一部抜くような作業というのも、洋服としての着やすさにも繋がりますし、少しそういった方向に軸足をおいてコレクションするのもいいかなと思いました。

中村それは僕もすごく見てみたい。例えば「ソルファ」のパーカーのときみたいに、刺繍ではないけれど白地に銀で印刷できるならとても着やすいしかっこいいものになるでしょうね。

石川みなさん本当に愛用してくださっているのが伝わってくるコメントでした。

中村はい、ありがたいです。

石川あと、傘の希望が多いんだなと思いましたね。また、小さめのお弁当が入れられるトートバッグがほしい、という意見もありました。

中村傘は多かったですね、結構広い絵が多いから。いままでグラニフさんで小さいトートは作ったことありますか?

石川小さなトートバッグは今のところないですが、巾着バッグはあります。それもかわいく作れそうです。

中村「ホームタウン」の絵柄で出した縦長トートバッグみたいなものもいいですね。僕も緑の「オーサムタイガー」のを持ってます。

石川いつもリモートでお打ち合わせさせていただくときに背景で見えています。

中村打ち合わせの部屋の後ろに飾ってるんですが、あれはきれいな緑ですよね。

石川「ホームタウン」のトートバッグも大胆でよかったとコメントいただいています。ああいう作品の一部を切り取った感じのものも、おもしろいかもしれませんね。

中村あと、もともとのコンテンツをあまり知らない人も愛用してくれているのに驚きました。1番最初のときの対談で石川さんはすでにそこを言ってたんですが、僕はまだピンと来てなかったんです。でも、本当にそんなことが起こるんだと思って。

極端に言うとアジカンを聞いたことがないのにアジカンの絵のTシャツを着るとか。それはそれでいいんですが、自分の絵がもう一度、アパレルになることによって新しい人と出会ってくれるということが起こる得るんだというのが、僕はすごい不思議でした。

石川でもそれは結構起きています。『ストレンジャー・シングス 』などは如実でした。中村さんがあそこまで描かれるような作品なら、見たことないけど見てみよう、と思われた方は多いと思います。

中村今日同行してくれたカメラマンの橋本さんもそうですよね。まだ見てないときに先にTシャツ買ってくれて。

石川じゃあ、購入されてから見始めたんですか?

カメラマン橋本そうです。もともと彼女から勧められていて、そのタイミングで中村先生が描いたのを知ったので。

石川これはどこまで文字起こししましょうかね(笑)。でも実際にそういうことがアジカンさんや『四畳半』でも起こっていると思いますし、うれしい限りですね。

中村すごくうれしいです。僕にしても、自分の絵を展開するにあたって紙媒体の中の限界みたいなものを感じることがあって。例えばこれから先、やっぱり物理的な本や画集やCDがこれからも売り上げを伸ばしていく世界は考えにくいと思うんです。僕は好きですが、電子や広告で無料になるものを利用したい人たちがいるというのはもちろん理解できるので。

その中で自分の絵をどうやって受け取ってもらおう? 画集やカレンダーは出していきますが、より多くの方に喜んでもらえるのは何かな? というのは、もう他になかなかないのかなと思って。それでやり出したひとつが塗り絵で、みんなが参加できる完成してない画集と言ったらいいでしょうか。

それからグラニフさんと浅田飴さんとのコラボです。実際の「もの」として出せるという意味でそのふたつは僕の中で同じで、実物じゃないと食べたり着たりできないもの、という。

それから、毎日の生活の中で何でもいいなら好きなもの着たいじゃないですか。そういうことって、僕はイラストレーターをやって20年以上経ちますが今まで考えたことがなくて、絵を主体的に考えすぎていました。アイテムそれ自体の存在がかわいいという。だから今回リクエストを書いてくださった方の中には「Tシャツはサイズ的に着れなくても額に入れて飾ってます」みたいな方もいて「ああ、そういう方法があるんだ、おもしろいな」と思いました。

石川「推し活」ですよね。推し活というカルチャーが今すごく一般的になってきたと思いますが、そういう意味では今グラニフ自体「グラフィックで好きを形にしていこう」というある種推し活なんですよね。

好きな作品のTシャツを着るというのがライトな推し活というか、「私はこれが好き」という表明でもありつつ、誰かに見せるものでなくても自分自身が好きなものを着てたり近くにあった方が勇気づけられる、元気になれるというような。推しのぬいぐるみやアクスタをデスクに置いておくと、仕事がんばろうって思えるのと同じですよね。

中村置けない会社の場合もあるし、普段は見えないところでという場合もある。前回のモッズコートの中面が柄になっているのはそういう方に向けてましたね。僕、あれ出すまで「これでいいのかな?」と不安でした。商品写真が1枚しか使えない場合だともはや絵が見えないじゃない、と。

石川普通のモッズコートに見えますよね。

中村誰かに「これは何なの?」と聞かれてはじめて「いやこれ中にね…」という感じじゃないですか。でも、それがいちばん助かるというご意見もたくさんいただいて、ああそうなんだ、と改めました。僕は会社勤めじゃないし、ずっと自分の家で仕事をしてるから、そういう気持ちもわからなかったんです。

あと、好評で僕もいいなと思ってたのは鳥のシャツ。

石川総柄のシャツですね。

中村これ、僕もすごく気に入ってるんですよね。鳥しか描かれてないな、みたいなね。

石川これもバランスですよね。やっぱり外に向けて出したい方もいれば大きく見せると恥ずかしい方もいらっしゃいますし、お仕事上着にくい場合などさまざまな事情があって。そういった方々に対しても中村さんの作品のすばらしさをいろんな角度で見せられたら、いいコレクションになっていくだろうなと思いました。

中村どれぐらいで流行が変わるかわかりませんが、5年ぐらい前には絵をTシャツにするときどれだけ色を抜くか、どれだけデザイン的に仕上げるかみたいなグラフィック化する方向だったのが、今逆の流れが来てますよね。ステッカーをスマホの裏に貼る文化の延長線上だと思うんですが、デザインし直していないパッケージイラストがフルカラーでTシャツに貼り付けてあるだけっていう。

僕らの世代はデザインされていない派手な服は寝間着にしかできないよ、みたいな感覚だったのが若い人たちの間で変わってきてるのも、とても可能性があるなと思って見ています。

石川そうですね。

中村僕らがあまり「かっこいい」「かわいい」を決めちゃいけないかも、とも思いました。第2弾ぐらいで、自分の感覚を信用しないようにしよう、デザイナーさんたちの感性をもっと信じてみようと。いまだにそれは続いているから、次はお客さんの意見をもとに自分では理解できないことでもやってみよう、ということがあってもいいんじゃないかと。そういうことはたくさん考えました。

石川そうですね。我々もいろいろと検討したうえで出していないものもあるので、世に出ているものだけではなくいろいろと考えているつもりではいるんですが。さらにまた別のエッセンスが加わって化学反応で新しいアイテムが生まれてくるだろうな、と思いますね。

中村明石さんのワンピースはまさにそれでしたね。

石川今回も明石さんのワンピースがお気に入りです! と写真を投稿してくださる方がまたいらっしゃいましたね。

中村今年の夏もたくさん着てくれて、鴨川に明石さんがたくさん現れたようです。京都の人じゃなくても、京都に観光で行くときに持っていくっということをされた方が、今年もたくさんいらっしゃいました。

石川いい旅行プランですよね。

中村『四畳半』のファンの方からしたら正装みたいなものなんですよね。

石川男性だと白いシャツでできますからね。

中村明石さんのワンピースを着てくれた男性もいましたよ。襟は取っていますが上から羽織るシャツみたいにして。

石川さっきの推し活のこともそうですが、世の中が経験に重きを置く流れになってきていると感じますね。ライブやフェスで、やっぱり行くからにはそこに染まりたいからTシャツを買って、どちらかというと派手なTシャツでもイベントだからと着ることで少しずつ当たり前になって、そこから日常で着ていってなんていうふうに。

そうやって世の中がどんどん「自分の好きなものを着ていこう」という感覚になってきていると思うと、中村さんと一緒に作らせていただく商品で、『四畳半』好きだよ、アジカンさん好きなんだよというのを表現しやすいというのは、僕らもうれしいです。

そこから会話が始まって「好きなの?じゃあ今度一緒に行こうよ」となったらよりうれしいですよね。

中村そうですね。

石川今回、ご意見をお寄せくださった方の発言自体にも「いいね」がついたりしていて、あるファンの方がつぶやいた提案にいいと思った他のファンの方がリアクションをされて、という新しいコミュニケーションも生まれていました。

中村ほんとだ、いいねがついている投稿もありますね。「どの商品もお気に入りです!中村佑介展で展示されている線画やラフが白のTシャツに黒線or黒のTシャツに白線でシンプルに描かれたのがあったらめちゃくちゃ欲しいです!」はよかったんですよね。

石川あとは「リクエストは、ひとまわり小さめのトート(A4ファイル対応程度)/お弁当サイズトート…トート言い過ぎ」の方など。

中村それでいうと、前に出したハンカチをお弁当包むのに使ってくれてたり、会社のカバンに結んでくれてたり、ああそうか、会社や学校に行くこともあんまり考えてなかったと毎回思いましたね。作ってるときはそこまでのことを考えてなかったけど、裏を返すとその人たち用のものが作れてなかったんだなと。どちらかというと休日のイメージでしたね。

石川休日のイメージでしたが、みなさんにとっては平日に使えるものがうれしいというコメントは多かったですね。あとはタナ子ちゃんが人気ですね。

中村そうなんですよ。タナ子ちゃんや浅田飴のシリーズは、僕の中でアパレルにしたらかわいくなりすぎるというか、男性が着にくくなっちゃうかなと思ってあまり選んでなかったんです。でもこうやって聞くと、立ち絵のタナ子ちゃんがいいという声はかなり多いんですよね。一度作ってみてもいいかもしれないですね。

石川タナ子ちゃんたちは立ち絵の印象が強いですが、もしかしたらTシャツ用に別のポーズをとっている絵にするのもありかなと思います。

中村傘の面ごとにいろんな色でプリントするだけ、とかもいいですね。

石川全面プリントはコスト的にはちょっと難しいのですが(苦笑)。

中村そうですよね。またそれは何か考えますね。

石川「ワールド ワールド ワールド」のTシャツかパーカーが欲しいという声もありました。

中村いや、そうなんですよ。第2弾でシャツ総柄で作ったからこれはいいよねと思っていたけど、シャツを買った人は他のアイテムでも揃えたいと思ってる。いつか必ずと約束したいですがお話したように毎回作れるTシャツの種類が決まっているので、でもいつか絶対作りたいですね。

石川そうですね。

中村「崩壊アンプリファー」と「君繋ファイブエム」の絵も、何回も使ってるはずだけど、確かにTシャツや長袖やパーカーで使ってなかったですよね。今まではトートバッグとマグカップぐらいだった。

石川今回やっとハーフジップのスウェットとセーターになりましたね。1回やっちゃうと…。

中村そうなんですよ、やった気になるし、思い入れが強くて最後の方まで残ったのにボツになるものもあるから作った気になってしまっている絵柄はいっぱいありますよね。いつかボツになったシリーズはこれですと見せられるものは全部見せたいですね、記事の中とかで。

石川そうですね、ブランドとしてはボツになったものも次に出る可能性があるので、あまり出せませんが…。

中村さんに見ていただいてボツになったものと、中村さんにお見せする前にボツになってるものもありますよね。

中村僕が提案してボツになったものもあるので、全部あわせるとすごくいっぱいあるんです。でも僕のは結局毎回、復活しないので出してしまってもいいんじゃないかと思います。 過去に第2弾でポツになったものが第3弾でというのは、たぶんないと思うので。

石川1回のコレクションで20種類ぐらい出るとしたら、世に出ていないボツは40ぐらいありますね。

中村40以上ありますし、バリエーションの色違いとかでもなく全く違う絵を使った全く違うアイテムなんですよね。

石川ギリギリまで残っているデザインは何度も見ているので作った気になってしまってましたね。

中村だから、今まで出したものと今回のリクエストをみて、これだけしか出していなかったとは思いませんでした。今回のためにグラニフで出したコレクションを集めようとして「大量にあるからこれは画像作るの大変だぞ」と思ったら「あれ?、終わり?」って。思い出が多すぎたんですよね。

石川だから、こういう風にみなさんから意見を言っていただいて「それ出てなかったか!」と気づきましたよね。

中村いっぱいそういうものがありました。当たり前すぎて出してるものだと勝手に思い込んでたものが。

石川そうですね。記事での公開は難しいかもしれませんが、以前トークショーをやらせていただいたときにボツ案などをスクリーンに映したりしたので、ああいう機会がまたやれるといいかなとは思います。今回もどこかでやりたかったんですが、時間があわなくて。でも、今回の1日店長をやられるところに来ていただけたら、特製の中村さんの名刺をお渡しできます。

中村はい。住所はグラニフさんの住所で、そこに僕はいないんですけどね(笑)。

石川ご自宅の住所を公開するわけにはいきませんので(笑)。

今回は本当にたくさん意見をお寄せいただいて、これは本当に、次回以降の参考にさせていただきます。

中村ぜひしたいと思います。時間かかってもいいなら全部実現したいぐらいですね。

石川そうですね。他にもいろいろ新しいことをやってみましょうという話を少しずつさせていただいています。今回に限らず年1回ペースぐらいか、もしかしたら他のコレクションとも一緒にやらせていただくかもしれませんので、引き続き中村さんとのコレクションを楽しみにしていただければと思います。まずは今回の第4弾をお楽しみください。

僕らだけでお話するより、こうやってファンの方ともお話しつつ、毎回驚きもありつつで商品を作っていけたらなと思います。今回のご感想・リクエスト企画のTシャツ当選者は発送をもって発表とかえさせていただきます。

またこうしてご意見をお伺いしますので、そのときはぜひご参加ください。

中村よろしくお願いします。

石川というわけで、第1弾のご感想・リクエスト企画についてでした。ありがとうございました。

「#中村佑介Xグラニフ」
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募集期間:10月16日(水)〜11月30日(土)

※当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
※賞品は2025年1月中発送予定です。
※抽選賞品の内容、送付時期は変更になる可能性がございます。

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<ロケ地>

源湯

住所:京都府京都市上京区北町580-6
HP:https://yutonamisha.com/sento/minamotoyu/

出町座

住所:京都市上京区三芳町133
HP:https://demachiza.com/

編集:石川祐/文章:kao/写真:橋本優馬

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